2010年7月22日木曜日

アメリカ西海岸の茂木ドーナツ

今年になって大きな揺れをともなう地震が相次いで発生しているアメリカ西海岸で、日本の地震学者・茂木清夫氏(元地震予知連絡会会長、東京大学名誉教授)が 1969年に唱えたドーナツ仮説が注目を集めています:

ドーナツ仮説とは、ご存知の方も多いと思いますが次のようなものです ―― 来るべき大地震の震源域で地震活動が静穏化する一方で、その周囲の地震活動は活発になる。このような状況で、発生した地震の震央を地図上にプロットすると、地震活動の活発な地域がドーナツ状に見える。典型的なパターンでは、その後、震源域付近で直前の前震が発生し、空白域を埋めるように大きな地震が発生する。つまりドーナツの孔の部分で大地震が発生する。

上にリンクを張ったロサンゼルス・タイムズなどの記事では、1989年のロマ・プリータ地震や 1994年のノースリッジ地震を含む過去数十年分の地震をプロットすると、ドーナツ状のパターンが現れ、そのドーナツの孔の部分にサン・アンドレアス、エルシノア、サン・ジャシント(San Andreas、Elsinore、San Jacinto)という 3つの大断層系が含まれている、と伝えています。

上記ロサンゼルス・タイムズの記事は、カリフォルニア大学デービス校の物理学者・地質学者である John Rundle 氏の見解を中心に紹介していますが、2009年には別の研究者による以下のような論文も出されています:

以下の地図は、今年に入ってからカリフォルニア州南部を大きく揺らした 3つの地震の震源を示したものです。メキシコとの国境の南側で発生した M7.2 の地震をかわきりに、震源が徐々に北上してロサンゼルスに近づいている様子がわかります:

アメリカ西海岸では、断層系が相互に接続してネットワークのようになっており、ある断層で地震が発生すると、隣接する断層の応力バランスが変わって新たな地震の発生源になる、というドミノ倒しに似た現象がおきるという研究がいくつも発表されています。上の図に示された震源の北上傾向は、そのようなメカニズムが働いた結果かも知れません。

茂木清夫氏のドーナツ仮説を含む地震活動の時空間分布については、以下の記事が参考になります。関東・東北地方の震源の北上パターンなども紹介されています: