2020年4月25日土曜日

天問-1: 中国の火星着陸ミッション


4月24日、中国最初の火星着陸ミッションの名称が Tianwen-1(天問-1)に決まったと中国国家航天局(CNSA)が発表しました。「天問」(questions about the heavens)は『楚辞』に収録されている屈原(Qu Yuan)の作とされる詩の題名です:

世界大百科事典 第2版』は「天問(てんもん)」について、次のように解説しています:
中国古代の歌謡《楚辞》の編名。宇宙の開闢にはじまり,天の構造や大地の成り立ち,夏・殷・周の歴史的事件についての疑問を列挙して成り立つ特異な作品。質問の形式はとるが,その内容は中国古代神話・伝説についての基本資料の一つとなる。王逸の注は,楚の宮廷から追放された屈原が,楚の先王の廟の壁にかかれた神怪の図を見て,みずからの憤懣をこめつつ,その図に対する疑問を書きつけた,それゆえに編全体に秩序がないのだとする。

CNSA は Tianwen-1 ミッションの詳細を明らかにしていませんが、これまでに判明している点は以下のとおりです:
  • Tianwen-1 は今年7月に長征5号ロケットで打ち上げ
  • 2021年2月に火星到着、火星周回軌道にオービターを投入
  • 到着から数ヶ月後に探査車を搭載した着陸機が火星着陸
  • 着陸機はパラシュート、逆噴射ロケット、エアバッグを使って軟着陸
  • 着陸候補地点はユートピア平原(地図)内の2ヶ所
  • 探査車は太陽電池を動力源とし、少なくとも3ヶ月活動
  • オービターの火星周回軌道投入に成功すれば、アメリカ・ロシア・欧州・インドに次いで5番目あるいは6番目(今年7〜8月にアラブ首長国連邦が日本のロケットを使って火星周回衛星を打ち上げ予定、こちらの方が先になるかも知れない)
  • 火星着陸に成功すればアメリカ・ロシアに次いで3番目
  • 火星探査車の稼働に成功すればアメリカに次いで2番目