これも、このブログの更新が滞っているうちに伝えられたニュースです(1月24日付):
以下は記事の要旨です:
- 台湾の人工衛星 FormoSat-5 が、昨年11月に中東で発生した大地震の数日前に、電離層で起きた変動を捉えていた。将来の地震予知にとって幸先が良いこと、と研究者は語っている。
- 11月12日にイラン・イラク国境で発生したM7.3の地震(USGS資料)では、500人以上の死者と数千人の負傷者が出たと報道されており、2017年中に発生した地震としては最も犠牲者が多かった。
- 国立中央大学付属 Graduate Institute of Space Science の Liu Jann-yenq (劉正彦)教授の、FormoSat-5 についての記者会見での発言:
- FormoSat-5 によって集められたデータを分析した結果、地震発生の7日から9日前に電離層でイオンの集中が発生し、50%ほどイオンが増加したことがわかった。
- プレートの動きによって電荷の分離が起こり、電場が形成された結果、人工衛星に検知された。
- さらに研究を進めれば、人工衛星を地震予知に用いることができるようになるだろう。ただし、現在の FormoSat-5 はデータや統計の収集能力が限られている。
- 現在わかっているのは、地震の前に電離層でイオンの集中が起きること、その現象が地震のマグニチュードや震源の深さなどの状況によって影響されること。
- 今後10年以内に、かなり正確な地震予知が可能になるだろう。少なくとも、地震発生の数日前に天気予報のように予知が可能になり、地震に備えられるようになるだろう。
- FormoSat-5 は台湾最初の国産人工衛星で、2017年8月25日に米国内からスペースX社の Falcon 9 によって打ち上げられた。光学的リモートセンシング機器と科学観測用機器(AIP)が搭載され、リモートセンシングと科学調査の両方を行える。
- AIPは一体型のプラズマ・センサーで、電離層のプラズマ密度や速度、温度を広範囲にわたって計測できる。
日本は、阪神淡路大震災や東日本大震災を経験した結果、「地震予知はできない」として地震予知研究を投げ出してしまいました。一方、中国や台湾、それにヨーロッパ各国は地道に研究を進めています。2月に中国が打ち上げた地震電磁気観測衛星 Zhangheng 1 には、イタリアやオーストリアが制作した観測装置が搭載されています。ロシアも国際宇宙ステーションに地震前の電離層の変動を捉える観測装置を持ち込んでいます。
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