2023年8月14日月曜日

プレート・テクトニクスの創始者、死去

 
相対性理論ならアインシュタイン、進化論ならダーウィン(とウォーレス)というふうに、自然科学上の理論や概念にはただちに思い浮かぶ学者の名前があります。しかし、 地球科学に大きなパラダイム・シフトをもたらしたプレート・テクトニクスについては、そのような名前を思い浮かべられる人は少ないのではないでしょうか。これは、プレート・テクトニクスが複数の学者によってほぼ同時期に着想され、複数の学者によって完成に導かれたという経緯があるためだと思われます。

プレート・テクトニクスの創始者、ウィリアム・ジェイソン・モーガン博士が 7月31日、米国マサチューセッツ州の自宅で死去しました。享年87歳。死因は公表されていません。
 
以下は 8月13日付『The Washington Post』紙の記事です。
 
1967年4月にワシントンで開かれたアメリカ地球物理学連合の会合で、モーガン博士は当初、大西洋の最深部であるプエルトリコ海溝について話す予定だった」、「その代わりに、彼は、海底からのデータを徹底的に調査した数か月にわたる研究に基づいて、はるかに新しくてエキサイティングな研究を共有することに決めた。(中略)この講演はほぼ即座に地球科学の分野を変えることになるが、数年後にモーガン博士は『私が昼休み前の最後の講演者だったため、ほとんどの人が部屋を出て行ったと苦笑いした」、「その会議で、彼は科学者たちに、新しいプレゼンテーションのために用意した『隆起、海溝、大断層、地殻ブロックというタイトルのアウトラインを配布した。地殻ブロックは後にプレートとして知られるようになった」、「モーガン博士は、球面三角法と呼ばれる数学の分野で訓練を受けていたため、地図を地図上の平面的な形としてではなく、地球という球面上の 3次元的な形として見ることができた(参考)」:

以下は "1990 Japan Prize" の受賞者です。プレート・テクトニクスの創始者としてモーガン博士を含む 3人が受賞しています。
 
「モーガン博士は、地震発生のときの断層面のずれの向き、トランスフォーム断層の方向及び海底の地磁気の縞模様等を総合して、地球表面を約20個のプレートに分割し、それらのプレートの運動の解析を試みた。そしてプレートの相対的運動からプレートが剛体的に地球表面に沿って回転運動していることを明らかにした。同博士はまた、ホットスポット(マントル深部から高温物質が上昇してくる点)が固定されているという考えに基づき各プレートの絶対的運動を決定した。この研究により、海嶺、沈み込み帯、トランスフォーム断層等がプレートの運動によって統一的に説明されることが示され、プレートの考えの重要さが広く認識され、この考えに基づく研究がその後爆発的に発展するきっかけとなった」: