2008年12月8日月曜日

地震からクジラ類の座礁を予測

クジラやイルカが集団で海岸に乗りあげる現象は、しばしば地震の前兆ではないかとささやかれます。しかし、逆のことを考えている人もいます:
上記は『サイエンス・ブログ』に12月7日付で掲載された記事ですが、要約すると次のようになります:
12月7日、南米・フランス領ギニア沖の大西洋中央海嶺で、M5.8とM4.9の海底地震がおきた。震源の深さはともに10kmと浅い。震源周辺の海域は、クジラやイルカがイカ類を補食する餌場である。今回の海底地震で発生した圧力波によって、この海域で潜水していたクジラやイルカの群に、10分の1程度の割合で聴覚器官の気圧障害が発生したと考えられる。この聴覚器官の障害によって、エコーロケーション能力(自ら発する超音波によって周辺の様子を把握したり、餌を見つけたりする機能)が損なわれ、潜水や捕食に支障が生じ、さらにサメ類などに襲われやすくなる。これらの危険を生き延びた場合、海流や彼らの回遊コース、1日あたり約100マイル(約160km)の移動速度を勘案すると、約30日後の来年1月上旬にアメリカ・フロリダ州の海岸でクジラやイルカ類の集団座礁が発生する可能性がある。
つまり、クジラやイルカの集団座礁現象は地震の前兆ではなく、地震の結果であるという考えです。

クジラの集団座礁事件として最近大きく報道されたのは、オーストラリア・タスマニア島での一件です:
この座礁事件では、11月22日に64頭、29日に200頭前後が座礁し、救助活動がおこなわれたにもかかわらず、多くの個体が死にました。この出来事についても、下記記事によれば10月26日に南極海で発生したM5.1(震源の深さ10km以浅)の地震が原因だとのことです:
上記記事には、クジラの群の推定移動経路とオーストラリア周辺の海流図が載っています。

地震はさておき、
環境保護団体がクジラやイルカ類に大きな影響を与えるとして問題にしているのが、海軍の艦船が使用するアクティブ・ソナー(超音波を発信し、他の艦船や魚群によって反射されて戻って来るまでの時間から距離を測り、反射音の方向から目的物の方向を知る。[広辞苑])です。カリフォルニア州の沖合では、環境保護団体からの差し止め請求を連邦地裁が認め、海軍がソナーを使うことに制限が加えられていました。しかし、このほど(11月12日)、連邦最高裁がこの差し止め請求を認めない決定を下しています: