2009年5月6日水曜日

豚インフルエンザと陰謀説

UFO、HAARP、鳥インフルエンザ、金融危機など、テーマを問わずさまざまな陰謀説が語られています。なぜ、いい歳をした大人が幼稚でたわいもない陰謀説に入れ込むのか、常々不思議に思っています。今回の豚インフルエンザについても、さまざまな陰謀説や隠蔽説が流布しています。下記の記事は、それらを批判的に紹介しています:
上記記事には、次のような豚インフルエンザについての陰謀説が集約されています:
  • バイオ・テロ攻撃があったが、政府(普通はアメリカ政府とされる)が混乱を恐れて隠蔽し、豚インフルエンザとして処理しようとした
  • 軍の生物兵器のテストが失敗しウィルスが流出した
  • 巨大製薬企業の卑劣な策略
  • オバマ民主党政権がパンデミック対策費を削減したことに対する共和党の報復
  • メキシコの麻薬カルテルがウィルスを解き放った(メキシコでは、政府と麻薬組織の間で「戦争状態」になっており、年間 6000人を超える死者が出ています)
  • アルカイダによる攻撃
  • 牛肉・鶏肉業界が、競合する豚肉の危険性をアピールすることで豚肉の消費を減らそうと企んだ
  • アンチ・ヒスパニック勢力によって仕掛けられた細菌戦争(豚インフルエンザによる死者の大半がメキシコ人であることと、オバマ大統領がメキシコから帰国した直後に感染が広まったことが根拠)
  • 実際は豚インフルエンザの感染拡大は起きていない。経済危機や気候変動から人びとの注意をそらすために企まれた騒動。あるいは、ブッシュ政権下でおこなわれた軍や CIA によるテロ容疑者にたいする拷問についての論争から人びとの目をそらすために企まれた騒動。
記事では、最近急速に普及しているトゥイッター(Twitter)が陰謀説や流言飛語の流布を加速しているとして、関係者の注意を呼びかけています。トゥイッターでは、メッセージがアルファベットで 140文字に制限されているため、誇張や誇大表現が多くなりがちで、理性的で根拠にもとづいた情報が減る傾向があるとのことです。

地震予知や宏観異常を扱うホームページやブログにも、今回の豚インフルエンザの感染拡大について、出所の怪しい情報や薄弱な根拠にもとづいて陰謀説を唱えているところがあります。これらのサイトはふだんから、さしたる根拠もなしに何らかの現象を地震の前兆と決めつける傾向があります。キジの鳴き声や PC の誤作動を海外の地震の前兆と即断したり、鉄道の運行障害を地電流と安易に関連づけたりなどなど、例をあげだしたらきりがありません。そのようなことを書いている当人の精神状態を推し量ることは困難ですが、少なくとも外観上は、決めつけや思いこみが非常に強く、確証バイアス(*)のループに陥っているように見えます。このような決めつけ・思いこみ・確証バイアスなどの要素が、陰謀説に対する肯定的な態度の背景にもあるように思います。地震予知サイトが陰謀説をサポートするような言辞を並べることは、そのサイトの地震予知が思いこみや確証バイアスによる信用ならない予知であることを自ら宣言しているようなものです。

冒頭にも述べましたが、なぜ人は陰謀説に入れ込むのか、なぜ陰謀説は廃れないのか、私は長年、不思議に思ってきました。最近、ようやくその理由について、私なりの仮説が固まりつつあるのですが、長くなるので別の機会に書くことにします。

(*)確証バイアスについては以下のサイトを参照してください: