2025年10月8日水曜日

第3の恒星間飛翔体が太陽系に進入 (続報-7)

 
欧州宇宙機関(ESA)の 2機の火星周回衛星、エクソ・マーズ微量ガス探査機(ExoMars Trace Gas Orbiter)とマーズ・エクスプレス(Mars Express)が、火星に接近した恒星間彗星 3I/ATLAS を観測しました。
 
以下の GIF 動画はエクソ・マーズが撮影したものです。同機のカメラでは彗星の核とコマを区別できませんでした。「地球から月面に置かれた携帯電話を見るのと同じくらい不可能だった」とのことです:


 
以下の静止画では、多少彗星らしい姿が確認できます:
 
もう一方のマーズ・エクスプレスの画像には 3I/ATLAS の姿が現れていません。これは、エクソ・マーズの露出時間が 5秒であるのに対して、マーズ・エクスプレスの露出時間の上限が 0.5秒だったことが原因とみられています。現在、マーズ・エクスプレスの複数の画像を合成するなどして、微かな彗星の姿を浮かび上がらせられないかなどを試みているとのことです。
 
 
関連記事

2025年10月7日火曜日

第3の恒星間飛翔体が太陽系に進入 (続報-6)

 
太陽系外から飛来した 3I/ATLAS が 10月3日、火星に最接近しました(0.194天文単位、約2900万km)。火星の表面で活動中の探査車や火星を周回している探査機が観測体制を敷いていましたが、まず、NASA の探査車・パーシビアランスが 10月4日に撮影した画像が公開されました。探査車のカメラは天体撮影用ではなく、天球上を移動する天体を追尾して撮影する機能がないため、3I/ATLAS は長く伸びた姿で写っています:
 
NASA のマーズ・リコネッサンス・オービター(Mars Reconnaissance Orbiter)には高解像度の HiRISE(High Resolution Imaging Science Experiment)カメラが搭載されているので、撮影結果の公開が待たれます。欧州宇宙期間(ESA)の複数の火星周回衛星も 3I/ATLAS の観測を行うことになっています。
 
以下の記事では、今回公開された 3I/ATLAS の姿をカラー化し拡大して(画像1画像2)、「巨大な円筒形の宇宙船(massive cylindrical craft)」と表現しています:
 
関連記事

2025年10月6日月曜日

地形を示す用語 (その2)

 
全部わかりますか? 比較的なじみが薄いのは "Strait"、"Channel"、"Sound"、"Marsh"、"Isthmus"、"Atoll" あたりでしょうか(拡大図)。
 

Map of Important Geography Terms. Which do you think are missing? More about each term: brilliantmaps.com/important...

[image or embed]

— Brilliant Maps (@brilliantmaps.bsky.social) 2025年9月27日 8:01
 
 
関連記事

マントル・サンドウィッチ

  

⚒️🧪 New modelling suggests there might be a "mantle sandwich" beneath the Himalayas, with the underlying slice of Indian crust not underthrust as a rigid block, but flowing as a partially melt beneath the Asian plate, and underplating it. agupubs.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1029/...

[image or embed]

— Chris Rowan (@allochthonous.bsky.social) 2025年9月11日 21:29
 
ヒマラヤ山脈とチベット高原の隆起の原因についての新説です:
 
以下は "Plain Language Summary(平易な言葉による要約)" を Google Gemini に翻訳してもらったものです(部分的に修正しています) ——

ちょうど1世紀前、エミール・アルガンは、インド大陸とアジア大陸の地殻が衝突中にその厚さを倍増させ、それによってヒマラヤ・チベットの「世界の屋根」を隆起させたという仮説を立てました。アルガンのこの先見的な視点は、今日でも広く受け入れられており、チベットの下には連続した 約70~80km の厚さの地殻が存在するという仮定が、地域のデータを解釈するために広く採用されています。

しかし、直接的および間接的な制約は、この仮定と矛盾しています。例えば、実験データは、地殻の岩石が 約40km より深いところでダクタイル流動(粘性変形)を起こすと、リソスフェアがチベットほどの大きさの高原を維持する能力を制限する可能性があることを示しています。また、南チベットのマントル岩石の地球化学的データは、それらが 約50~80km の深さから隆起してきたことを示唆しています。したがって、地球上で最も高く、最も大きな造山帯の形成と持続は、依然として謎に包まれています。

本研究では、最先端のシミュレーションにより、ヒマラヤ・チベットの地殻を倍増させる遥かにもっともらしいメカニズムは、アジアのリソスフェア(岩石圏)の下にインドの地殻が粘性的にアンダープレート(下部に沈み込むように付着)することであり、アジアの地殻の下ではないことが示されました。このシナリオでは、インドの地殻が浮力を提供し、アジアのマントルが強度を提供することで、ヒマラヤ・チベットの地形が隆起し、支えられます。ヒマラヤ・チベット山脈全体の構造に関するこの新しい見解は、地球上での造山活動の理解を深めます。

—— 

バルト海からカスピ海へ

 
まったく知らなかったのですが、バルト海から内陸水路だけを経由してカスピ海まで行けるようです。以下の記事の最終段落に「北欧フィンランドに接する露北部カレリア共和国のオネガ湖(地図)で、バルト海からカスピ海に向かっていた露海軍の最新鋭ミサイル艦『グラート』を攻撃」とあります:

ヴォルガ川はカスピ海に流入しているのですが、Wikipedia のヴォルガ川の水運に関する項には「ヴォルガ川から北にある湖(ラドガ湖、オネガ湖)を繋ぐヴォルガ・バルト水路によって、サンクトペテルブルクやバルト海へも航行でき」との記述があります。:
 

小惑星 2025 TQ2 が月と地球に接近・通過

 
小惑星〝2025 TQ2〟が 10月3日に月と地球の近くを通過していたことが、NASA/JPL による 10月5日付のデータベース更新で明らかになりました。
 
2025 TQ2 (2025年10月5日付予報)
接近日時(日本時間)
(月)10月3日 02:00
 (地球)10月3日 04:02
接近日時 誤差
(月)± < 1 分
(地球)± < 1 分
接近距離 (月)0.978 LD
(地球)0.029 LD
推定直径
2 ~ 4 m
対地球相対速度
14.7 km/s ≅ 5万3000 km/h
初観測から地球接近まで0 日
次の地球接近2028年7月10日ごろ
公転周期285 日 ≅ 0.78 年
分類
アテン群
 (1LD=地球から月までの平均距離)
 
このブログでは、原則として地球から 1LD 以内に近づく小惑星を記事にしています。
 

 
関連記事

2025年10月5日日曜日

地磁気嵐は大地震を誘発する?

 
2025年夏の地震活動と地磁気嵐の関連性を論じた研究論文です(査読はされていないようです):
 
以下は上記論文からの抜粋です —— 
 
マグニチュード8以上の地震(M8+)は、通常は年に一度程度の頻度で発生します。しかし、2021年以降、マグニチュード8以上の大きな地震は発生していませんでした。この空白期間は2025年7月に終わり、5回の M7+ イベントが発生しました。これには、7月16日のアラスカにおける M7.3、7月20日のカムチャツカ東部における M7.4、7月28日のマッコーリー島における M7.0、7月29日のカムチャツカ半島における M8.8、そして 8月22日のドレーク海峡における M7.5が含まれます。
 
以前の論文(OAG、2025年7月)で、私たちは、地磁気嵐の発生時に極カスプ(polar cusp、注)回廊にあった地域では、その後、強い地震(M ≥7)が発生する可能性があることを示しました。磁気嵐の開始から地震までの時間は、数日から約2.5ヶ月に及ぶことがあります。本稿では、この磁気活動と主要な地震活動との関連性に関する我々の仮説を、2025年6月の地磁気嵐と関連している可能性が高い、2025年7月と8月の地震活動を用いて検証しました。 
 
図3は、強い地震(M ≥7.0)の将来の震源地が、最近のいくつかの地磁気嵐(2~3回)の開始時に極カスプ回廊に位置していたことも示しています。これは、太陽風と地磁気嵐からのエネルギーが地殻内に蓄積し、破局点に達したときに地震を引き起こす可能性があることを示唆しています。地震の直前の地磁気嵐は、エネルギーが特定の地域に何年、何十年、あるいはそれ以上の期間にわたって蓄積しているとしても、それを誘発する「最後の一押し」に過ぎないのかもしれません。

地磁気嵐の開始と地震の間にかなりの遅延があることは、太陽風と地磁気嵐からのエネルギーがマントル流体の上昇を促進し、それが地震活動につながる可能性があることを意味するかもしれません。

太陽風と地磁気嵐からのエネルギーがマントル流体の上昇強度に影響を与えるという考えは、さらなる調査のための有望な道を開きます。2025年8月8日の06時(UTC)頃に中程度の地磁気嵐が始まりました。この期間中、東経約30度から東経150度の地域が極カスプ回廊にありました。我々のパターンに基づくと、この地域では2025年9月から10月にかけて地震活動の増加が予想される可能性があります。

[注]極カスプ: 地球の磁場が漏斗のように先細りになり、地球の極の近くで地面に繋がっている場所。太陽からの風が地球に吹き込む「入り口」の役割をしており、極地のオーロラや大気中の現象を引き起こす原因の一つと考えられている。

——

小惑星 2025 TP1 が地球と月に接近・通過

 
小惑星〝2025 TP1〟が 10月2日に地球と月の近くを通過していたことが、NASA/JPL による 10月4日付のデータベース更新で明らかになりました。
 
2025 TP1 (2025年10月4日付予報)
接近日時(日本時間)
(地球)10月2日 14:08
 (月)10月2日 16:20
接近日時 誤差
(地球)± < 1 分
(月)± < 1 分
接近距離 (地球)0.59 LD
(月)0.70 LD
推定直径
8 ~ 19 m
対地球相対速度
12.6 km/s ≅ 4万5000 km/h
初観測から地球接近まで−1 日
次の地球接近2091年10月7日ごろ
公転周期525 日 ≅ 1.44 年
分類
アポロ群
 (1LD=地球から月までの平均距離)
 
このブログでは、原則として地球から 1LD 以内に近づく小惑星を記事にしています。
 
 

2025年10月4日土曜日

書店にて

 
「左の本が気に入ったら、次は右の本をお試しあれ」
 
左の本は "Crippled America: How to Make America Great Again(不自由なアメリカ:アメリカを再び偉大にする方法)"、右の本は."Hitler's Last Days: The Death of the Nazi Regime and the World's Most Notorious Dictator(ヒトラーの最期の日々:ナチス政権の終焉と世界最悪の独裁者の死)"
 

Well played Book Seller! 😂📖

[image or embed]

— Cory Laran (@corylaran.bsky.social) 2025年10月1日 18:16
 

熱暴走地震

 
テキサス大学オースティン校の研究成果です。稍深発地震では、これまで知られていなかったメカニズムによって規模(マグニチュード)が大きくなることがあるとのことです:

研究のきっかけは 2024年7月にチリのカラマ(Calama、地図)を襲った M7.4 の地震です。震源は深さ 125km で、沈み込んでいるプレート(スラブ)の内部でした。
 
以下は記事からの抜粋・テキトー訳です —— 
 
この深さ(125km)で発生した地震は、通常、地表での揺れははるかに小さくなる。しかし、カラマ地震の場合、テキサス大学オースティン校の研究者らが発見した一連の過程がその強度を著しく高めた。

カラマ地震のような稍深発地震は、岩石の乾燥に伴う圧力の上昇、つまり「脱水脆化(dehydration embrittlement)」と呼ばれる現象によって発生すると長い間考えられてきた。このプロセスは、プレートが高温な地球の内部に向かって沈み込み、高まる熱と圧力によって岩石内の鉱物から水が押し出されることで起こる。脱水した岩石は弱体化し、亀裂が生じ、それが破壊へとつながり、スラブ内で地震を引き起こす。
 
この脱水過程は通常、温度が 650℃ を超えると停止すると考えられている。しかし、研究者らによると、カラマ地震が非常に強力だったのは、この限界を超え、「熱暴走(thermal runaway)」と呼ばれる第2のメカニズムによって、より高温の領域へと破壊が 50km も深くまで到達したためである。これは、最初の滑りによる大きな摩擦によって破壊の先端で大量の熱が発生し、それが周囲の物質を弱め、破壊を前進させたのである。 
 
「稍深発地震が想定を覆し、低温の領域から非常に高温の領域へと破壊が進行し、はるかに速い速度で伝播するのを観測したのは今回が初めてです」、「これは、メカニズムが脱水脆化から熱暴走へと変化したことを示しています。」
——