2022年6月24日金曜日

初動発震機構解とセントロイド・モーメント・テンソル解 — 能登半島群発地震

 
6月19日15時08分に石川県能登地方で発生した最大震度6弱の地震(M5.4、震源の深さ13km; 速報値はM5.2、深さ10kmでした)について、気象庁は「北西−南東方向に圧力軸を持つ逆断層型」としています。

気象庁のウェブサイトには、主な地震の発震機構解が掲載されているのですが、ほとんどの場合、初動発震機構解(初動解)かセントロイド・モーメント・テンソル解(CMT解)のどちらか一方のみです。ところが、今回の最大震度6弱の地震については両方が掲載されています。

同一の地震の初動解とCMT解は似た傾向を示すことが多いのですが、今回の地震では初動解とCMT解が大きく違っています。初動解は典型的な横ずれ断層型、CMT解は逆断層型となっています。

初動解 Credit: 気象庁


CMT解 Credit: 気象庁


気象庁のCMT解の解説ページには次のような記述があります:
CMT解でも初動解と同様に発震機構解が得られ、断層面の候補(2つの面)や圧力軸方向などが推定できます。ただし、初動解が断層運動の始まった点(震源)における発震機構を示すのに対し、CMTによる発震機構は断層運動全体を一つの発震機構で代表させた場合の発震機構を示しています。(中略)実際の断層は板のように一様なものではなく、途中でその大きさや方向が変わったりします。このため、初動発震機構解とCMTによる発震機構解は、同じ地震でも異なる場合があります
 
写真に例えるならば、初動解は早いシャッタースビードで地震の始まりの瞬間を捉えたもの、CMT解は遅いシャッタースビードで地震の始まりから終わりまでを撮影したもので、撮影中に被写体が動いているので多少ぶれている、というところでしょう。
 
素人考えですが、今回の最大震度6弱の地震は、地下の断層の横ずれ的な動きで始まり、その後、逆断層的な動きが卓越するようになったと解釈することができるのではないでしょうか。


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