2014年6月3日火曜日

地震とエルニーニョ


5月21日水曜日(現地時間)の夜、ベンガル湾北部を震源とする地震が発生し、負傷者が出ました(インド気象局の発表では M6.0、USGSの資料では M5.9、深さ約40km、震央地図)。この地震は、通常ほとんど地震が発生しない場所で起きたため、その原因については様々な考え方があるようです(USGSの発震機構解は横ずれ断層による地震であることを示しています)。

以下の記事は、上記のベンガル湾の地震に関連して、今夏にインド洋でも発生が予測されているエルニーニョと地震の関係について興味深い情報を掲載しています:

以下は、上記記事の一部をテキトー訳したものです(説明図):
ボストン大学の地球・環境関係の教授である Cutler J. Cleveland 氏は、〝Environmental Science〟に掲載された最近の論文の一つで次のように述べている ―― エルニーニョ現象は海面温度を上昇させる大量の熱の流入によって引きおこされる。このような熱の流入は、海洋循環の通常のパターンによって駆動されうる。海洋循環のパターンにおける非線形かつ確率論的な要素が、海洋の様々な部分における熱の集積や発散の速度を変動させるのである。

Cleveland 氏は、地球物理学者の Daniel A. Walker 氏の発見を紹介して、「エルニーニョ: 大気、海洋、地殻の循環の間の相互関係」という論文の中で次のように述べている ―― Walker 氏は興味深いパターンに気づいた。それは、数ヶ月にわたって地震が多発する期間、あるいは、数ヶ月の間に複数の地震によって大量のエネルギーが放出される期間がエルニーニョ現象に先行するということである。この事実は、地震活動とエルニーニョ現象の関連を暗示している。

『ニューヨーク・タイムズ』紙に引用されたところによると、Walker 氏は1987年9月までの285ヵ月間にわたる地震と極端な気象の発生を研究した結果、このような論理的帰結に到達した、とのことである。Walker 氏はこの研究中に、東太平洋海膨沿いの地震による歪みの解放と、5年から7年の間隔で繰り返すエルニーニョの間に驚くべき一致があることを見いだした。

このような相互関係は、ロンドン総合大学統計科学・地球科学・災害研究センターの Serge Guillas 氏、 Simon J. Day 氏、B. McGuire 氏による「エルニーニョ-南方振動と東部熱帯太平洋の海底地震についての統計的分析」という論文によっても裏付けられている。

「南方振動の指標は地震活動に対して95%の信頼水準で肯定的影響があると、論文の著者たちは要旨の中で述べている」と上記記事には書かれています。

エルニーニョの発生原因については、海洋と大気の循環が複雑に絡み合っているため、現在でもよくわかっていないようです。私は、東太平洋海膨で大量の溶岩流出が起きることがきっかけでエルニーニョが発生すると単純に考えたいのですが、そのように考える専門家はいないようです。

話が飛躍しますが、木星の周囲に硫黄の原子が分布しているという観測事実を説明するために、かつては、木星の磁場や太陽風と木星大気の相互作用などを考慮した精緻で複雑な仮説が組み立てられていました。しかし、実際に探査機が木星のそばを通過して観測した結果は、木星の衛星イオに複数の活火山があって、そこから噴き上げられた硫黄がイオの軌道上に拡散している、という単純なものでした。エルニーニョ現象の原因も、わかってみれば意外に単純だった、ということにならないでしょうか。


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