4月18日、メキシコ南西部で M7.2、震源の深さ 24km の地震があり、若干の被害が出ました。この地震に際して、震央から 273km 離れた首都メキシコ・シティでは揺れの始まる 71秒前に日本の緊急地震速報に相当する警報が出されました。また、震央から 129km しか離れていないリゾート地アカプルコでも 27秒前に警報が出されました。
以下はこの時の様子を伝える 『ロサンゼルス・タイムズ』 の記事です。4本の動画が掲載されています(注)。注目していただきたいのは2本目の動画です。ニュース番組を録画したものですが、10秒目あたりからスタジオ内に消防車のサイレンのような音が聞こえてきます。これがメキシコ版緊急地震速報の警報音で、気づいたキャスターは不安げに周囲を見回し始めます。しばらくすると天井に取り付けられている照明器具類が揺れ始め、1分7秒目あたりでキャスターがよろけるほどの揺れがあります:
緊急地震速報は日本だけ、あるいは日本が世界で最初に開発したと思っている方が多いのではないでしょうか。実はメキシコの方が大先輩なのです。すでに導入から 21年が経過しているとのことです。日本が緊急地震速報を全国で本格的に運用し始めたのは 2007年10月のことですから、まだ 6年半ほどの実績しかありません。
メキシコ版緊急地震速報は、1985年のメキシコ大地震(M8.0、USGS資料)を契機に開発が始まりました。この大地震では少なくとも 9500人が死亡し、震源から 300km 以上離れた首都メキシコ・シティでも400棟以上のビルが倒壊、3000棟以上が深刻な損傷を受けるなどしました。湖の中に建設されたアステカ王国の首都テノチティトランをもとに、周囲を干拓して発展したメキシコ・シティはもともと地盤が軟弱で、大地震にともなう長周期震動が増幅されて大きな被害に結びついたと考えられています。
メキシコ版緊急地震速報については以下の文書を参照してください:
- メキシコ版緊急地震速報の現状と将来展望 (PDF形式)
3本目と4本目の動画は、東北地方太平洋沖地震に際して出された日本の緊急地震速報の様子を紹介しています。 『ロサンゼルス・タイムズ』 の記事では、緊急地震速報によって新幹線は脱線を防ぐために減速し、工場では有毒な化学物質の安全を確保するなどの対策がとられる、と紹介しています。
ロサンゼルスのあるカリフォルニア州では、近い将来の大地震発生が予測され、緊急地震速報の必要性が叫ばれているものの、開発は遅々として進んでいません。記事によると、財政難に陥っている連邦政府は緊急地震速報システムの開発に予算をつけず、カリフォルニア州の議会では、昨年、緊急地震速報システムの開発費用を一般予算から拠出することを禁じる内容を含む法案が可決、州知事が署名しているとのことです。
4月上旬、メキシコ北西部のカリフォルニア湾の浅瀬に2匹のリュウグウノツカイが現れたのは、4月18日にメキシコ南西部で発生した M7.2 の地震の前兆だったのでしょうか:
- リュウグウノツカイ 2匹出現 ― カリフォルニア湾 (14年4月11日)
ロサンゼルスのあるカリフォルニア州南部では大地震への不安が高まっています。3月10日には同州北沖で M6.8(USGS資料)、4月18日には南のメキシコで M7.2(USGS資料)が発生。チリ、パプア・ニューギニア、ソロモン諸島などでも M7級 の大地震が頻発しているためです。
(注)記事冒頭の動画はスタートボタンをクリックしない方が無難です。開始までにすごく時間がかかります。
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