2009年2月28日土曜日

深発地震のダブルヘッダー

南太平洋の島国トンガの近海では、太平洋プレートがオーストラリア・プレートの下に沈み込み、しばしば大きな地震が発生しています。以下の記事は少し古いものですが、この地域でおこる深発地震には興味深い特徴があり、深発地震の発生メカニズムを説明する上で重要な考慮点となることを伝えています:
以下は記事の概要です:
トンガ周辺の深発地震は、同じ場所で繰り返し発生する。同じ場所で発生する地震は、波形も酷似している。また、1度深発地震が発生すると、24時間以内に同じ場所で再び地震が発生することが多い(地震のダブルヘッダー)。これは、サンアンドレアス断層などでおきる浅い地震にはめったに見られない特徴である。このような深発地震特有の現象は、通常の断層がスリップすることによって地震が発生するというモデルでは説明できない。

約 80km より深いところで発生する地震の原因については、数十年来論争が続いている。深発地震の発生を説明する主要なモデルは 2つ ―― 「transformational faulting(相転移断層)」モデルと「ductile shear zone(塑性剪断帯)」モデル。

相転移断層モデルは、高圧の下で物質が相転移をおこすさいに岩石の弱い部分に変形が集中し、深発地震の原因となると考える。相転移とは、たとえば炭素がダイヤモンドに変化するような過程。いちど相転移がおきてしまえば、短時間のうちに同じ場所で再び相転移がおきるとは考えられず、このモデルでは深発地震が同じ場所で繰り返すことを説明できない。

塑性剪断帯モデルは、浅いところでは急激に動いて被害をもたらす断層運動も、地下深部ではよりゆっくりとした塑性剪断流動に漸移していくと考える。この塑性剪断流動では粘性によるエネルギーの消費が熱を生み出す。いちど地震が発生すると、そのとき発生した熱によって同じ場所で地震が起こりやすくなる。短時間で 2度目の地震が発生することを説明できる。

研究チームは、トンガとフィジーに 11か所の観測点を設置、6年間にわたって深発地震のデータを収集。震源位置の特定精度は誤差 1マイル未満。3群の深発地震を発見。各群は 10~30ほどの地震からなり、各群内の地震はすべて同一の場所で発生。
以下のリンクは、上の記事のもとになった研究チームの報告です(科学誌『サイエンス』所載)。掲載されている図によって、24時間以内に発生した 2つの深発地震の波形がどの程度類似しているか、確認できます:
Image Credit: U.S. Central Intelligence Agency