2016年12月25日日曜日

西暦992年、夜空が怪しく輝いた (その1)


AAAS(アメリカ科学振興協会)発行の科学誌『Science』所載の記事です:

以下、テキトー訳です:
イングランドのエセルレッド無策王(Æthelred the Unready)がバイキングの侵略者たちに宥和金を支払って和平を請い、アンダルシアのムスリム支配者・アルマンゾール(Almanzor)がスペイン北部のキリスト教徒をさんざんに撃ち破った西暦992年。その年の暗い冬の夜、北の空がこの世のものとは思えない輝きで明るくなった。

サクソニー(現在のドイツ)の年代記編者は「太陽のような光が北から照らした」と記述した。アイルランド北部アルスター地方の編者は「天が血のような赤色に染まった」と書き残した。

彼らが目撃したものは、最新の研究によれば、太陽で発生した極めて強力な太陽フレア(スーパーフレア)の高エネルギー粒子が地球を「爆撃」したために、通常よりもはるかに南まで到達した北極光すなわちオーロラであった。

数年前、研究者たちは、世界中でこの時期の木材の年輪に放射性同位元素・炭素14のレベルの急上昇が見られることに気づいた。これは、宇宙線が上層大気に衝突して大気の通常の成分である窒素14を炭素14に変換することによって生じたと考えられる。

しかし、どのような種類の宇宙線がこのような現象を引きおこし、それはどこからやって来たのだろうか。

いくつかの研究によれば、西暦774~775年と993~994年の炭素14の急激な増加の少し前に異常なオーロラが見えたという記録が残っており、問題の宇宙線は太陽からやって来たことが示唆されている。科学者たちは後者の時期の古文書を渉漁して、サクソニー、北アイルランド、朝鮮半島で992年10月から993年1月の間に8件のオーロラ目撃記録を見いだした。彼らの研究報告は『Solar Physics』誌に受理されている。

どのくらい南までオーロラが見えたのかを計算した結果、992年から993年にかけての太陽嵐は、1957年に詳細な太陽観測が始まって以降に記録されたいかなる太陽嵐よりも強力であったが、おそらく1859年の有名なキャリントン・イベントほどではなかった、と研究チームは推定している。キャリントン・イベントでは世界中の電信網が不通になっている。

西暦990年代の太陽嵐はすばらしい光のショーと大差ないものを見せてくれただけだったが、もしそれが現代に起きたとしたら、おそらく、テクノロジーに依存したわれわれの社会は壊滅的な打撃を受けることになるだろう。

続く