2015年6月12日金曜日

プレートテクトニクス 2.0 ― プレートは固くない (その4)


5月4日付「プレートテクトニクス 2.0 ― プレートは固くない (その3)」からの続きです。

「剛体であるはず」のプレートが「固くない」、「変形する」とはどういうことなのでしょうか。

実は、プレートテクトニクスではプレートが本当に剛体であるとは考えていないのです。便宜上、プレートは剛体と見なして差し支えない、あるいは、剛体として取り扱うと何かと都合がよい、ということに過ぎないのです。

もしプレートが真の意味で剛体であったら、海洋プレートが海溝に沈み込む時に下に向かって曲がることはないでしょう。また、地震波も観測されているようには伝わらないでしょう。なぜなら、地震波はプレートの微小な変形が伝播していくものですが、真の剛体は変形しないからです。プレートテクトニクスの研究者がそのような点に気づかずに「プレートは剛体だ」と主張しているはずはありません。

以下に、プレートが剛体であるという命題が便宜上のものであることを示す文言をいくつか引用します(下線はこのブログの筆者)。

たとえば、『プレート収束帯のテクトニクス学』(木村学、東京大学出版会、2002)には次のような文言があります:
剛体として取り扱い得る岩盤、すなわちプレート

プレートを球面上の動く剛体と仮定したときに、その相対運動を記述するのに、スイスの数学者オイラー(Euler)によって1776年に確立された球面幾何学を使うことができる。

さらに『世界のプレート運動』(瀬野徹三、地学雑誌、2005)には次のような記述があります:
プレートを剛体として扱うことはあくまでも近似であることを知っておく必要がある。現実のプレートは長い年月のうちにその境界で力を受け,あるいは自分自身の内部の応力によって変形する。海洋プレートの場合,その変形は比較的小さいが,大陸と大陸が衝突する衝突帯では,大陸プレートは大きく変形している。

プレート運動を記述する上でもっとも重要なのはオイラーの定理である。この定理は簡単に言うと「球面上での剛体の運動は回転である」ということである。

ネット上では、プレートが剛体でないことを示す事実を見つけてきては、嬉々としてプレートテクトニクスは間違っているとか破綻しているなどと主張する人を見かけます。そういう人は、プレートテクトニクスをよく勉強していないか、もっと基礎的な変形体力学などを理解していないことを自ら吐露しているようなものです。

(続く)