前回 2016年の米国大統領選挙で、ほとんどの専門家がヒラリー・クリントン氏の勝利を予測する中、トランプ大統領誕生を予測したアメリカン大学(在ワシントン D.C.)の歴史学者 アラン・リクトマン(Allan Jay Lichtman)氏。その予測手法は 1981年にロシアの地震学者 ウラジーミル・ケイリス=ボロック(Vladimir Keilis-Borok)氏とともに編み出したものです。
リクトマン氏はこの手法を使って、1984年の大統領選挙以降、1回を除いてすべての勝者を正しく予測してきました。唯一、予測がはずれたのは 2000年の大統領選挙で、アル・ゴア氏の勝利を予測したものの、実際にはジョージ・W・ブッシュ(子)氏が当選した時でした。
「予測法を思いついたきっかけは 1981年、地震予測で知られるロシア人科学者との出会い。『地震を予測するように大統領選の結果を予想できないか』。2人は協力し、過去のすべての大統領選を分析。その結果、現職大統領とその所属政党がホワイトハウスに築いた力をいわば『地盤』と見立て、それがどれほど外からの力、つまりライバル政党の挑戦者が引き起こす『地震』に耐えられるかで計測可能だと判断した」:
リクトマン氏の予測手法は、その著書『The Keys to the White House』に詳述されています。以下は Wikipedia の記述からの抜粋・テキトー訳です:
リクトマンは、1981年にロシアの地震学者ウラジーミル・ケイリス=ボロックと共同で「ホワイトハウスへの鍵」モデルを作成した。このモデルは、13 の True/False(真/偽)基準を用いて、現職政党の候補者が次の米大統領選挙で勝利するか、敗北するかを予測するものである。(13 の)鍵(キー)は、大統領選挙の結果は、ホワイトハウスを支配している政党の実績に第一義的に左右され、挑戦者や現職政党の候補者による選挙運動に影響されないという理論に基づいている。この理論によると、実利を重視するアメリカの有権者は、ホワイトハウスを支配する政党の実績——経済的な好況と不況、外交政策の成功と失敗、社会不安、スキャンダル、政策の革新など、大統領任期中の出来事やエピソードに基づいて評価される——に基づいて大統領を選ぶ。リクトマンとケイリス=ボロックは、1860年(共和党と民主党が4年間競い合った最初の選挙)以降のアメリカ大統領選挙のデータに、地球物理学で使われているパターン認識方法を応用して、現職大統領が所属する政党が勝利する前提となる 13の診断質問(The 13 Keys to the White House)を作り出した。これらの質問に対して False(偽=該当しない)が5つ以下の場合、現職大統領の政党の候補者が一般投票(popular vote)で勝つと予測され、6つ以上の場合は、挑戦政党の候補者が一般投票に勝つと予測される。
2000年の大統領選挙では、一般投票でゴア氏の得票率 48.4%であったのに対して、ブッシュ氏は 47.9% でゴア氏の勝利。しかし、選挙人の獲得数ではゴア氏 266人に対してブッシュ氏は 271人で、結局ブッシュ氏が大統領に就任しました。リクトマン氏の予測モデルは一般投票の結果を対象としているので、唯一予測が的中しなかったとされる 2000年の大統領選挙でも、実際にはモデルは正しい予測をしていた、ということになります。
Wikipedia の「The Keys to the White House」の項には、数日前まで以下のような記述があったのですが、現在は削除されています:
As of August 5, 2020, Allan Lichtman predicts that Donald Trump will lose the 2020 United States presidential election to challenger Joe Biden based on seven of the thirteen keys of his prediction model turning false against the incumbency.(2020年8月5日現在、アラン・リクトマン氏は、彼の予測モデルの 13のキーのうちの 7つが現職候補に対して False(偽)となることに基づいて、2020年の米国大統領選挙においてドナルド・トランプ氏が 挑戦者のジョー・バイデン氏に負けると予測している。)
以下は、イギリスの経済誌『エコノミスト』(The Economist)が提供している大統領選挙の情勢分析です。日々更新されています: