2010年7月16日金曜日

カトラ山はいつ噴火するか

アイスランドのエイヤフィヤトラヨークトル氷河(氷冠)で起きた噴火は 6月中ごろから沈静化し、現在は火口に水が溜まっている状態です。

カトラ山 ―― エイヤフィヤトラヨークトル氷河に隣接するミールダルスヨークトル氷河の下に潜む火山で大きなカルデラがある ―― が、エイヤフィヤトラヨークトルの火山活動に誘発されて大規模な噴火をおこすのではないかとの指摘があり、アイスランドの大統領も懸念を表明していることはこれまでも報道されてきました:

仮にカトラ山が連鎖噴火をおこすとすれば、それはいつ頃になるのでしょうか。

Smithsonian Institution の火山データベースによれば、エイヤフィヤトラヨークトル氷河での火山噴火は過去に 4回 ―― 西暦 550年ごろ、920年、1612年、1821年 ―― 記録されています。そのうち、550年を除く 3回では、同じ時期にカトラ山も噴火しています:
  • 550年ごろ: カトラ山は 500年ごろ、540年ごろ、590年ごろに噴火したようですが、エイヤフィヤトラヨークトル氷河の噴火とは間隔があいており、関連はないようです。
  • 920年: エイヤフィヤトラヨークトル氷河の火山は VEI=3、カトラ山は VEI=4 の噴火をおこしました。
  • 1612年: エイヤフィヤトラヨークトル氷河の火山は VEI=2、カトラ山は VEI=4 の噴火をおこしました。
  • 1821年 12月 19日~1823年 1月 1日: エイヤフィヤトラヨークトル氷河の火山は VEI=2の噴火おこしました。カトラ山は、エイヤフィヤトラヨークトル氷河の噴火の終息から約半年後の 1823年 6月 26日から同年 7月 23日にかけて VEI=3 の噴火をおこしました。

VEI(火山爆発指数)は、噴火の規模を示す指数です。地震のマグニチュードと同じように、対数目盛になっています。

古代ローマ帝国の都市ポンペイを厚い火山灰の下に埋没させてしまったベスビオ火山の噴火は VEI=5 と推定されています。インドネシアで 1883年に起きたクラカタウ火山の噴火では山体のほとんどが吹き飛び、津波が発生して死者 36417人が出ました。人類が経験した最大級の火山噴火の一つと言われているこの噴火の VEI は 6 とされています。

1914年に起きた桜島の大正大噴火では大量の噴出物で桜島と大隅半島が陸続きになりましたが、この時の VEI は 4 とされています。1707年に起きた富士山の宝永噴火では江戸にも火山灰が積もりました。この噴火の VEI は 5 となっています。

話をアイスランドの火山にもどします。エイヤフィヤトラヨークトルの噴火で開始と終息の日付がわかっているのは 1821年から 1823年にかけての事例だけです。このときの噴火は 約 1年間続きました。そして、この噴火が終息してから約 6ヶ月後にカトラ山が噴火を始めました。

今回のエイヤフィヤトラヨークトルの噴火は 4月中旬に始まり、6月中旬に終息(あるいは中休み)しています。このまま活動が終わるのだとすれば、わずか 2ヶ月間の噴火活動ということになります。このため、約 1年間続いた 1821~1823年の活動と同列に扱うのはためらわれますが、この時の事例が今回も当てはまるとすると、カトラ山は今年の暮れから来年初めあたりに噴火を始めることになります。

なお、カトラ山の噴火は前出のデータベースに記載されているだけで 132回あります。地質学的な時間スケールで見れば比較的頻繁に噴火を繰り返しているといえます。そのため、過去 4回のエイヤフィヤトラヨークトルの噴火のうち 3回でカトラ山が連鎖噴火をおこしたように見えるのは単なる偶然であって、一方の噴火が他方に影響したという因果関係があるわけではないという考え方もあります。


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