2010年1月28日木曜日

スピリットの脱出を断念

火星探査車・スピリットは、右前輪が動かなくなるなど満身創痍になりながらも、火星に着陸して以来 6年を超える期間(当初の予定は着陸後 90日間でした)にわたって活動を続けていたのですが、とうとうこの日がやって来てしまいました。

スピリットは、昨年 5月にトロイと名付けられた砂地に車輪がスタックして動けなくなっていました。それ以来 10か月近く、さまざまな脱出方法が試みられてきましたが、ついにトロイからの脱出を断念することになりました。非常に残念です。今後は、固定観測基地として使われることになりますが、当面は、間近に迫っている火星の冬に備えて、車体の傾斜を調節して太陽電池パネルを太陽の方向に向けることが最優先の課題となります。太陽電池から電力が十分に得られないと、観測装置やモーターなどの保温ができず、厳寒の火星の冬を乗り切ることが困難になります:
スピリットを砂地から脱出されるための最後の手段として、先端部に観測装置を搭載したロボティック・アームを使って車体を持ち上げ車輪にかかる重量を軽減すること、砂を排除すること、岩石を移動させて車輪と地面の間に噛ませることなども検討されていたようです。しかし、ロボティック・アームの出せる力が弱いことや、アームの先に取り付けられたさまざまな観測装置に障害が出る可能性などを勘案して実行されなかったようです。観測装置は、動けなくなったスピリットを固定観測基地として運用する場合にも必要となることから、リスクを冒さないという判断になったのだと思います。

以下は、スピリットの前方監視カメラが捉えた画像を合成した動画です。画面右側に写っているのは、数年前から動かなくなっている右前輪です。この右前輪の不具合を克服するために、スピリットはこの右前輪を引きずりながら後ろ向きに進むようにプログラムし直されています。左前輪はほとんど砂地の中に埋まっています。地面に影がうつっているのは、先端部にさまざまな観測装置を取り付けたロボティック・アームです:
次は、後方監視カメラが捉えた画像を合成した動画です。この動画を見る限りでは、もう少しで砂地を脱出できそうなように見えるのですが:
もう一台の火星探査車・オポチュニティは、2004年の火星着陸以来 6年以上が経過してあちこちに不具合が生じていますが、全体的には健康な状態を保っています。現在は、エンデバーと名付けられた大きなクレーターに向かって移動中で、その道すがら、さまざまな観測をおこなっています。最近は、火星の深部から放出されたと考えられる “Marquette Island” と命名されたバスケットボール大の岩石の分析をおこなっています:

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