2016年6月18日土曜日

1世紀前から地球を周回するようになった小惑星


NASAの発表です。今年4月27日に発見された小惑星〝2016 HO3〟が、地球を周回する準衛星(quasi-satellite)軌道をとっていることがわかりました:

この小惑星は、地球とほぼ同じ軌道で太陽の周りを公転しています。しかし、完全に同じというわけではなく、その軌道は地球よりも楕円形で、地球の公転面に対して約8度傾いています。公転周期は地球が365.2422日であるのに対して、〝2016 HO3〟は365.93日です。

軌道が楕円形であるため、この小惑星には地球よりもわずかに太陽に近い位置にある時期と、地球よりもわずかに太陽から遠い位置にある時期があります。前者の時期には軌道速度が速くなるため地球を追い越し、後者の時期には軌道速度が遅くなるため地球に追い抜かれます。この動きを地球から見ると、地球の周りを周回しているように見えるわけです。

以下の動画は、画面中央に地球を置いて、小惑星〝2016 HO3〟の動きを追っています。上に述べた「追い越し、追い越され」の関係がわかっていただけると思います:


天文学者 Phil Plait 氏のブログ 〝BAD ASTRONOMY〟 より

小惑星〝2016 HO3〟がこのような準衛星の軌道をとるようになったのは約1世紀前からで、今後数世紀にわたってこの軌道を維持すること、また、地球に約38LDより近づくことはなく、約100LDよりも遠ざかることがないことが計算でわかっています(1LD=地球から月までの平均距離)。

〝2016 HO3〟の直径は40~100mと推定されています。地球に最も近づいたときでも明るさは21等級ですので、一般的なアマチュアの望遠鏡で観測することは不可能です。地球を監視するために他の太陽系から送り込まれた人工天体だと想像したくなります。

10年ほど前までは別の小惑星〝2003 YN107〟が同じような準衛星の軌道をとっていましたが、現在は地球から遠ざかっています。


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