2016年7月5日火曜日

熊本地震: 阿蘇市狩尾地区の陥没


6月21日付「衝上断層」の補足です。

阿蘇市狩尾地区の陥没について報道の映像はいろいろあるのですが、管見の限りでは、陥没全体が見渡せるものはありませんでした。やっと見つけたのが以下の調査資料です。福岡大学と九州工業大学のチームが現地調査した結果を、「平成28年熊本地震地盤災害説明会」(2016/4/27 福岡市)で報告した際の資料です:
13ページ: 国土地理院が地震後に撮影した空撮写真に陥没の範囲を赤色で明示。上向きと左向きの黄色い矢印は、それぞれ14ページと15ページに載っている写真の撮影方向。

14ページ: 県道175号線の陥没前と陥没後の写真。4月24日の時点では、県道の段差(北側)は応急の復旧工事で車が通れるようになっている。

15ページ: 県道175号線から西方向に広がる陥没の様子と、県道の段差(南側)。ここも応急の修復が終わっている。陥没は東で深く、西に行くほど浅くなっているように見える。

16ページ: 陥没の北側の住宅(黒い屋根)と、その南で陥没範囲内の住宅(赤い屋根)。どちらも大きな損傷はない。

17ページ: 阿蘇市内牧地区でも道路に大きな段差が生じている(右上の写真)。

18ページ: 陥没被害の特徴のまとめ。注目すべきは「ある幅を持って段差が生じており、また幅の内部が陥没している」、「陥没部分上の家屋は、段差になっていなければ被害はほとんど無いように見える」という点。

19ページ: なぜ陥没したのか? 4つの可能性を提示。注目すべきは「地震動による建物被害はほとんど見受けられない」、「建物の被害は段差によるもの」という点。

以下のテレビ報道でも、陥没直近の民家に大きな損傷は見られません。住民は「大きい揺れ」があって、揺れが収まってから外を見たら地面が陥没していた、と証言しています。垂直方向の大きな衝撃などにともなって陥没帯の両側が隆起し段差が生じたとは考えられません:

この陥没について「衝上断層」という言葉を誤用していた例のサイトでは、陥没場所の両側で爆発・爆縮が発生したことが原因であると説明(下図)しているのですが、到底納得できるものではありません:

離れたところで複数の爆発・爆縮が同期して発生するのはあまりにも都合が良すぎますし、陥没の全体的形状とも符合しません。「垂直断層」の反対側に生じる逆断層や、「押し円錐」が地表と交差してできる円錐曲線(楕円形など)で囲まれた隆起はどこにあると言うのでしょうか。陥没直近の住民の証言や建物の損傷状況もこの説とは相容れないように思われます。

上記資料をまとめたチームが使った国土地理院の空撮写真は以下で見ることができます:

県道175号線の陥没現場の様子(地震前)をグーグルのストリート・ビューで360°見回すことができます:


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