2009年11月17日火曜日

獅子座流星群と宗教

日本時間の今夜半から明日早朝にかけて、獅子座流星群が出現のピークを迎えます:
今年の出現数については平凡という予測と、かなり期待できるという予測があります。『天文年鑑』(誠文堂新光社)に掲載されている予報では、18日午前 0時と 7時に出現のピークがあり、出現規模は「B」(ピーク時に安定して 1時間あたり 10~30の出現をみせる)とされています。昨日が新月だったので、月の明かりに妨げられることがなく、観測条件としては最良です。しかし、関東地方は雨か曇りの予報で、観測は難しそうです。

この流星群は、2001年に北米で 1~2秒に 1個の割合で流星が飛ぶというすばらしい天体ショーを見せています。さらに遡ると、1833年に 1時間あたり推計 10万(毎秒 30)の流星や火球が飛び交うという「流星雨」あるいは「流星嵐」をおこしたという記録が残っています。

この 1833年におきた獅子座流星群の大出現は、キリスト教の一派である「Seventh-day Adventist Church」(セブンスデー・アドベンチスト教会、アドベンチスト派、キリスト再臨派)が生まれる契機となったことを、以下の記事は紹介しています:
以下に記事の一部を意訳します(完全な逐語訳ではありません):
数万個の星が空から落ちてくる光景を目撃したとしたら、あなたは何を考えるだろうか。おそらく、この世の終わりが来たと考えるに違いない。多くの人びとがそう考えた。

1833年 11月 12日から 13日にかけての夜に現れた獅子座流星雨は非常に壮観であったため、アドベンチスト派教会の設立につながった。同教会は、今日では世界中に約 1700万人の信者をかかえ、特にアメリカ内陸部では大きな存在感をもっている。

1833年の獅子座流星群は、当時の多くの人びとと同じように「流れ星は気象現象だ」と考えていた科学者たちが、それは天文現象なのではないかと考え始める契機となった。

(1833年の)流星雨を観察した人びとは、当日午前 3時の空は白昼と同様に明るくなったと書き残している。

獅子座流星群に関する NASA の歴史資料によると、「流星の大嵐が地球に押し寄せてきた…」と 19世紀の天文学著述家 Agnes Clerke は書いている。「空は、あらゆる方向に流星の輝く軌跡が刻みつけられ、壮大な火球によって照らし出されていた。」Clerke は、この夜は 9時間で 総計 24万個の流星が出現したと推定している。

他の人びとも、この神聖な出来事について書き残している。1888年のアドベンチスト派の書物『ホーム・サークルのための聖書講読』には、「天のすべてが動き、聖書の黙示録に書かれている恐ろしい光景を想起させた」と書かれている。この本では、この世が終末を迎えキリストが再臨する前に、「星が天から落ちる」と預言する新約聖書のいくつかの節に言及している。

1833年当時、多くのキリスト教徒は、キリストの再臨の予兆に注意を払っていた、とアドベンチスト派の施設の一つである Loma Linda 大学宗教学部の学部長 Jon Paulien 氏は語る。

聖書は、大地震、太陽が暗くなる日、そして月が赤くなるときも(キリスト再臨の予兆として)預言している。これらの現象は、すべて 1833年に先立つ数十年の間にすでに起こっていた。

「あとはもう一つの予兆、すなわち天から星が落ちてくることだけが残っており、それがおきたときには(キリストの再臨の)確証となる、と人びとは言っていた」と Paulien 氏は語る。「当時としては妥当な想定でした。科学が普及していない時代にあっては、このような現象に対して、より宗教的な解釈を施しがちになるものです。」

1833年の獅子座流星群を契機に、キリスト教徒の中には、キリストの再臨に対する準備を始めるものが出た。しかし、1840年代になっても、預言されたようにはキリストの再臨が起こらなかったため、一部の人たちは、(1833年の)流星雨やその他の予兆は、キリストの再臨について人びとがより高い理解を探し求めるようにし向ける神の意思によるものである、と結論づけた、アドベンチスト派教会を 1863年に設立したのは、1833年の流星雨をこの世の終わりの予兆と見なした人たちだった ―― と Paulien 氏は語る。
アドベンチスト派については以下の資料を参照してください: