今年8月23日、米国東海岸のバージニア州を震源とする M5.8 の地震がありました(8月24日付 「バージニア州で被害地震 ― アメリカ」 を参照してください)。震源が浅かったために広い範囲で大きな揺れがあり、建物に亀裂が入ったり原子力発電所が停止するなどの被害がでるとともに、ふだん地震を経験することが少ない東海岸の人々に大きな衝撃を与えました。
この地震の前に、大気の不自然な温度上昇や電離層の異常が観測されていたことが、先週開催されていた AGU (American Geophysical Union、米国地球物理学連合) の秋期大会でポスター・セッションとして発表されました:
- Cloudy with a chance of earthquakes (曇り、ところによっては地震)
上記記事の内容をまとめます:
研究を発表したのはカリフォルニア州チャプマン大学の地球物理学者 Dimitar Ouzounov 氏のチーム。
毎朝一定の時刻に撮影された震源域の衛星画像 7年分を分析。また、地表からの平均的熱放射を計算するモデルをコンピューター上に構築。
地表からの熱放射は、日や季節によって変化する。同じ日付のデータを何年分も比較した結果、8月11日と8月23日にバージニア州中央部の上空8~12kmで統計的に有意な(熱放射の)急上昇があったことを見いだした。さらに、地震発生当日である8月23日のデータでは、約400km上空の電離層に電磁気的な変化も観測されていた。
この変化のパターンは、大いに物議を醸す学説の説くところと合致している。この学説の支持者は、地震の前には、地表から放出されるラドン・ガスが増加して下層大気の温度を上昇させ、さらに電離層の電気的・化学的変化を引きおこす、と主張する。
バージニア州のデータでは、熱的変化は地震発生の約7時間前におきていた。Ouzounov 氏は、この7時間という先行時間は地域によって異なると考えている。この熱の〝ホットスポット〟は、その後におこる地震の震央から約100km離れた場所に出現した。
Ouzounov 氏は、大気の観測が地震予知に使えるようになるまでには、さらに研究が必要だと語っている。しかし、もっと大きな課題は、(地震の前兆が大気に現れるという)学説が科学的に意味をなしていることを他の研究者たちに納得させることだ。
「(自分たちの研究に対する)懐疑的な意見が山ほどあります」と Ouzounov 氏は語っている。竜巻、洪水、暴風など、他の災害にははっきりと目に見えるサインがある。しかし、地震に関しては、目に見えず確認もされていない大地と空との間のやりとりを論じるという課題に研究チームは直面している。
米国地質調査所(USGS)の地球物理学者 Malcolm Johnston 氏は、そのような大地と空とのつながりは信じがたいとしている。彼を含む USGS の科学者たちは、20年間にわたってカリフォルニア州中のラドン・ガスのレベルを計測してきたが、地震との間にいかなる明瞭な関係も見いださなかった。Johnston 氏は、バージニア州で観測された異常な熱放射は、自然におきる気象変動(非常に大きい変動もありうる)で説明できるのではないか、と考えている。
Ouzounov 氏は、さらにデータを集め、ゆくゆくは地震予知を成功させて批判者たちを納得させたいと思っている。そして最終的な目標として、多くの要素 ― あるものは地上で計測され、あるものは空高くで観測される ― を統合した地震予知に思いを巡らしている。
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