2011年11月20日日曜日

キュリオシティの打ち上げ迫る


NASA の第3世代火星探査車〝キュリオシティ〟(Curiosity、好奇心)の打ち上げが迫ってきました。順調にいけば11月26日午前0時25分(日本時間)にフロリダ州ケープ・カナベラルから打ち上げられます。

以下の写真は、第1世代の〝ソジャーナ〟(写真中央、1997年7月4日に火星着陸、9月27日まで活動)、第2世代の〝オポチュニティ〟(左、2004年1月25日火星着陸、現在も活動中)、第3世代の〝キュリオシティ〟(右)を並べて比較したものです:
第3世代のキュリオシティはかなり大型化しています。それぞれの大きさは、ソジャーナが電子レンジ、オポチュニティがサンド・バギー、そしてキュリオシティは小形SUVやジープにたとえられます。

キュリオシティと人の大きさ比較
Credit: NASA/JPL

比較写真を見てわかるとおり、ソジャーナとオポチュニティにあった太陽電池パネルがキュリオシティにはありません。太陽電池に代わる動力源として、キュリオシティには熱電発電装置(原子力電池)が搭載されています。この装置には二酸化プルトニウムが 4.8kg 封入されており、それに含まれている放射性同位元素・プルトニウム-238 の崩壊熱を利用して発電をおこないます。さらに、この装置の廃熱で暖められた液体がキュリオシティの内部を循環し、精密な装置類を火星の厳しい寒さ(火星表面の平均気温は氷点下53℃)から守ります。

熱電発電装置に入っている二酸化プルトニウムは何層もの保護物質で覆われ、打ち上げが失敗しても打ち上げ場周辺が放射性物質で汚染されないようになっています。万が一、打ち上げ失敗時に装置が破損して放射性物質が飛散し被爆した場合の放射線量は50~100マイクロ・シーベルトで、平均的アメリカ人が約1週間に浴びる自然放射線の量と同じだと NASA は発表しています(プルトニウムの微粒子を吸い込んだ場合の内部被曝も含んでいるのかは不明)。

キュリオシティは1火星年(=687地球日)以上の活動を予定していますが、上記の熱電発電装置は最低でも14年間は電力を供給できるとのことなので、第2世代のスピリットやオポチュニティを上まわる長期間の活躍が期待されます。

着陸予定地点は、火星の赤道地帯にあるゲール・クレーター内部の低地で、クレーター壁から流れ下った水によって形成されたと考えられている扇状地が広がっています。このクレーターは直径 154km で、内部には分厚い堆積岩の露頭が見つかっています。この露頭に見られる地層群は、地球のグランドキャニオンよりも厚く、太陽系最大の峡谷とされる火星のマリネリス峡谷に匹敵します。長い年月をかけて堆積したと考えられるこの分厚い地層群を調べることによって、火星の過去の環境を詳しく知ることができると期待されています。

キュリオシティは打ち上げから約8ヶ月半で火星に到着し、スカイ・クレーン方式で火星に着陸します。以下の動画はその過程を描いたものです:
第1世代と第2世代の火星探査車はエアバッグ方式で火星に着陸(というよりは落下)しました(動画)。それに比べると、スカイ・クレーン方式は着陸地点をかなり精確に決めることができるものの、仕組みが複雑で失敗のリスクがかなり高まると思われます。こんな風にならなければよいのですが ・・・

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