8月3日午前9時56分、遠州灘を震源とする地震があり、静岡県や愛知県で最大震度4の揺れがありました。東海地震との関連が懸念されますが、NHKの報道は次のように伝えています:
今回地震が起きた遠州灘は、想定される東海地震の震源域に含まれますが、震源は東海地震が想定されるプレートの境目よりも深く、地震の起こり方も東海地震とは異なるということです。
まとめると、(1)震源がプレートの境界よりも深い、(2)地震の起こり方(発震メカニズム)が異なる、という2つの理由で、今回の地震は東海地震とは無関係としているわけです。この2つの点について調べてみました。
以下は、各研究・調査機関の発表をまとめたものです:
震源 | 深さ(km) | M | |
---|---|---|---|
気象庁 | 遠州灘(震央地図) | 約40 | 5.1 |
防災科学技術研究所 | 遠州灘(震央地図) | 23 | 4.7 |
米国地質調査所(USGS) | 豊田市の北東17km (震央地図) |
61.9 | 5.0 |
気象庁の発表では震源の深さ約40kmとなっており、NHKの報道にあったように「東海地震が想定されるプレートの境目よりも深」い場所です。
しかし、防災科学技術研究所の発表では深さ23kmとなっています。以下の図で今回の地震の震央である浜名湖沖の遠州灘付近を見ると、20kmの等深線が近くを通っています。深さ23kmという数字を信じるならば、今回の地震が発生したのはフィリピン海プレートの上面、まさにプレートの境目付近で発生したということになります:
- 太平洋プレートとフィリピン海プレートの上面等深線 (防災科学技術研究所「4章 地震はなぜ起きるのか」所載・萩原尊禮編「日本列島の地震,地震工学と地震地体構造」鹿島出版会より)
気象庁が発表したのは「速報値」で、データの解析が進むにつれて、より精度の高い「暫定値」、さらに最終的な「確定値」が定められることになります。今後、深さの数字がどう変化するか気になるところです。
一方、下の図は防災科学技術研究所が発表しているメカニズム解です。この図によれば、今回の地震は正断層型で、想定される東海地震は逆断層型ですから、NHKの報道にあった「地震の起こり方も東海地震とは異なる」という点については間違いがないようです。
防災科学技術研究所 AQUAシステム メカニズム解カタログより引用 |
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