2010年8月6日金曜日

スピリット応答せず

2004年 1月に火星に着陸して以来、設計寿命の 90日を大幅に超えてさまざまな科学的成果をあげてきた双子の火星探査車スピリットとオポチュニティですが、スピリットが厳しい状況に陥っています:

上記 NASA のプレス・リリースによると、3月 22日以来スピリットと地球との交信が途絶しているとのことです。

スピリットは、昨年 5月に「トロイ」と名付けられた軟弱な砂地に車輪がスタックして動けなくなりました。そして、そのままの状態でスピリットにとって 4度目の火星の冬を迎えています。この冬は 5月から 11月まで続きます。

冬の間は太陽の高度が低く、スピリットの車体に水平に取り付けられた太陽電池パネルに太陽光が十分にあたりません。スピリットには太陽電池パネルの角度を変える機能がないので、太陽電池パネルを高度の低い冬の太陽に向けるには、スピリットの車体を太陽に向けて傾ける必要があります。これまでの 3度の冬では、スピリットは丘陵地の斜面に移動して車体を傾け、太陽電池パネルが太陽に向き十分な発電が行えるようにしてきました。このようにして確保した電力を使ってヒーターを稼働させ、内部の電子回路や装置を冬の寒さから守ってきたのです。

しかし、今度の冬は状況が違います。平地にある「トロイ」という砂地から動けないため、車体を太陽に向かって傾けることができません。スピリットは電力不足に陥り「冬眠」状態になっているとみられています。ヒーターが使えないため、スピリットの内部温度は -55℃ まで低下していると見積もられています。この低温によって内部の電子回路や装置がダメージを受ける懸念があります。

スピリットには電力が回復したときに「冬眠」状態から復帰する機能が組み込まれているとのことです。NASA ではスピリットの電力が回復するのは太陽の高度が徐々に高くなってくる 9月末から 10月半ばごろではないかと考えています。さらに火星の夏至は来年 3月であるので、それまでにスピリットが目を覚まさないようであればスピリットとの交信回復は絶望的だ、と NASA の責任者は語っています。


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