最終目標である 14兆電子ボルトを達成するにはまだ数年かかるようですが、暗黒物質(ダークマター)の候補とされる「ニュートラリーノ」注といった超対称性粒子や、素粒子に質量を与える「ヒッグス粒子」など未知の粒子の発見が予想されているだけに、結果を大いに期待して待ちたいと思います。
ところで 「7兆電子ボルト」 ってどのくらいのエネルギーなのかわかりますか。「兆」という言葉や「電子ボルト」という耳慣れない専門用語に幻惑されて、きっとすごく大きなエネルギーなんだろうと思っている方が多いのではないでしょうか。しかし、さにあらず、です。ある学者によれば、数匹の飛んでいる蚊が持つエネルギー程度だそうです。
そもそも電子ボルトの定義は、「真空中で電子 1つが電位差 1ボルトの 2点間で加速されるとき得るエネルギー」です。電子は負の電気を帯びていますから、電位差があるところでは電位の高い方に向かって移動、つまり加速します。この時、電子が獲得するエネルギーが 1電子ボルトです。一言で言って、とても小さい単位です。
定義にしたがって 7兆電子ボルトを別のエネルギー単位に換算すると、
1.12 × 10-6 ジュールになります。
3.12 × 10-13 キロワット時
1.14 × 10-7 重量キログラムメートル
2.68 × 10-7 カロリー
7兆電子ボルトが非常に小さいエネルギーであることがわかっていただけると思います。これでは、コーヒー 1杯分のお湯すら沸かすことができません。もちろん、これは人間という「巨大」な生き物の立場から見た話で、極微の素粒子にとっては非常に大きなエネルギーです。また、素粒子をそのようなエネルギーを持つまで加速するには、加速器に大きな電力を注ぎ込む必要がありますが、それは別の話です。
[注] ニュートラリーノ: ニュートロンとニュートリノの区別がつかない人にとっては、脳内混乱にさらに拍車がかかることでしょう。変な鳥のコマーシャルで有名なインテルのセントリーノとも間違えないでいただきたいものです(笑)。
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