2月2日(月)夜、イランが初の国産人工衛星「Omid」(希望)を国産ロケット「Safir-2」(使者-2)で打ち上げました。イランでは 1979年にイスラム革命がおこり、パーレビー朝のシャー(王)による支配を打倒し、シャーを支援していたアメリカの影響力を排除することに成功しました。今回の衛星打ち上げは、その革命から 30周年になるのを記念した祝賀行事にタイミングを合わせたものです。
イランは、これまでにも他の国と共同で人工衛星を打ち上げてきた実績があります。しかし、人工衛星本体と打ち上げロケットがともに国産であるのは、今回が初めてです。
アフマディネジャド大統領は、今回の人工衛星は世界に「平和と兄弟愛」を運ぶものであるとし、イランの宇宙開発には軍事目的があるのではないかとの見方を「世界はそんな与太話を受け入れないだろう」と一蹴しています。同国の外務大臣は、人工衛星によってイランは「環境についてのデータ」(環境にも色々あります)を得ることができる、「イランの人工衛星開発は純粋に平和目的であり、イランの軍事能力は防衛を目的とするものだ」と語っています。
今回人工衛星の打ち上げに使われたロケット「Safir-2」は、長さ 22m、直径 1.25m、重さ 26トンです。一方、イランが保有するもっとも強力な軍用ロケット「Shahab-3」は、長さ 17m、直径 1.30m、射程 2000km で、イスラエルと、中東地域に展開する米軍を射程におさめています。
ロイターは、イランの宇宙開発小史を掲載しています:
以下は、記事の抜粋です:
- 2005年10月27日 ―― ロシアと共同で人工衛星「Sina-1」を打ち上げ。打ち上げ地はロシア、ロケットはロシア製コスモス 3M。西側メディアはスパイ衛星の可能性を取りざたしたが、専門家は偵察に使うにはカメラの性能が低すぎると指摘。
- 2008年2月4日 ―― 人工衛星開発計画の一環として国産ロケットを打ち上げ。同様のテストをさらに 2回おこなった後、純国産研究用人工衛星「Omid」(希望)を、2009年3月までに打ち上げると発表。
- 2008年8月17日 ―― 人工衛星打ち上げ用国産ロケット「Safir」にダミーの衛星を搭載して打ち上げ。米国政府当局者は、打ち上げは失敗したと発表。
- 2008年8月20日 ―― イランが、10年以内に有人宇宙飛行をする計画を持っていることが判明。人工衛星の打ち上げに使われる長距離弾道(ミサイル)技術は、兵器を打ち上げるためにも使用可能だが、イランはそのような意図は持っていない、と否定。イランの宇宙航空開発のトップ Reza Taghipour は、イスラム諸国と共同で Besharat(吉報、朗報)という名の衛星を開発する、また、ロシアやアジア諸国と共同で別の衛星を打ち上げる、と語ったと伝えられた。
- 2008年9月7日 ―― イラン・中国・タイの3ヵ国が共同で、中国のロケットを使用して、地震などの災害時の連携を促進する研究用人工衛星を打ち上げ。イランの電気通信担当大臣 Mohammad Soleimani は、衛星にはカメラが搭載されていると語った。
- 2009年2月3日 ―― 「Omid」(希望)という名の人工衛星を打ち上げたと発表。衛星の目的は情報の収集と機器のテスト。24時間で地球を14周する。
Image Credit: U.S. Central Intelligence Agency