1755年のリスボン大地震(Mw 8.5〜9.0)など、ポルトガルはたびたび大きな地震に見舞われて来ました。これらの大地震の震源はポルトガルの南西沖に広がるホースシュー深海平原(Horseshoe Abyssal Plain、地図)であると考えられていますが、主な断層帯から遠く離れたこのような場所で破壊的な地震が発生する原因は、長年の謎でした。このほど『Nature Geoscience』誌に掲載された研究がこの謎に光を当てています:
- Rare oceanic plate delamination may explain Portugal's mysterious earthquakes (まれな海洋プレートの剥離が、ポルトガルの謎の地震の原因となる可能性、動画・説明図あり)
以下は記事からの抜粋です ——
このほど『Nature Geoscience』誌に掲載された論文は、ホースシュー深海平原の地下で地震波の高速度異常が発見されたことを述べている。この異常は、陸上および海底地震計のデータを用いた地震波トモグラフィーと、地殻構造の様々な収束シナリオを検証するシミュレーションを用いて発見されたものである。
トモグラフィー・データは、この異常が古い海洋リソスフェアの剥離ブロックであることを明らかにした。つまり、通常は剛性を持つ海洋プレートが分裂し、下部が地球内部へ沈み始めたことを意味する。これは奇妙な現象のように思われた。なぜなら、これまでの剥離現象は大陸プレートでのみ観測され、海洋プレートでは確認されていなかったからだ。しかし研究チームのモデルでは、海洋マントルが上部の地殻から分離し始めた原因が「蛇紋岩化」にあることが示された。これは水が岩石に浸透し、水和させて含水蛇紋岩へと変質させるプロセスである。これにより分離が容易になるのだ。
この活動がポルトガルの地震の原因と考えられる。モデルはまた、剥離に先立って二つの破砕帯が存在した可能性を示している。研究者らは、海洋プレートの剥離が沈み込みプロセスの開始に関連している可能性があると推測している。このプロセスはプレート・テクトニクスにおいて従来、理解が不十分であった。しかし、沈み込みが強力な地震を引き起こすことはよく知られている。
論文の著者らは次のように説明している。「二つの破砕帯が、剥離作用を受けるリソスフェア・ブロックを分離し、そのブロックは北方向へ沈降を開始した。これにより、現在の高マグニチュード地震活動地域(例えば1969年の地震、そしておそらく1755年のリスボン大地震)において主要な逆断層が形成されたのである。」
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