1月7日午前2時27分ごろ、インドネシアのモルッカ海中央部で大きな地震がありました。気象庁の発表では M7.0、米国地質調査所(USGS)の発表では M6.6、震源の深さ 60km です(震央地図)。
モルッカ海のプレートテクトニクスは特殊です。震央地図を見るとわかるように、モルッカ海にはその東縁と西縁に沈み込み帯があります。モルッカ海の海底の岩盤は東と西の両方向に沈み込んでいるのです。海底が東西両方向に沈み込み、東側と西側にある島弧が近づいてくるため、モルッカ海はいずれ消滅すると予想されています。
モルッカ海の北端部(フィリピン・ミンダナオ島南沖)では、すでに東西の沈み込み帯が融合して、これまでに沈み込み帯で形成された付加体が集積しています。沈み込み帯の融合は次第に南下するとみられており、北から南に向かってファスナーを閉じるように海が消滅していくと予想されており、「ジッパー閉じテクトニクス」と呼ばれています。
モルッカ海の北に位置するフィリピン諸島も過去にはモルッカ海と同じような状況にあったのですが、ジッパー閉じテクトニクスによって海が閉じ、東西の島弧が衝突して現在のような形になったと考えられています。
モルッカ海の海底を東西方向に切った断面で見ると、海底の岩盤は東西両方向に沈み込んでいるため、「ヘ」の字のような形をしています。今回の地震は「ヘ」の頂点付近の深さ 60km で発生した逆断層型です。頂点付近では「ヘ」の厚さは 100km 余りあるようです。板を「ヘ」の字型に折り曲げるとき、板の上側では張力、下側では圧力がかかります。今回の地震はそのような下側の圧力によって発生したのではないか、と私は考えています。
参考書: 『プレート収束帯のテクトニクス学』、木村学、東京大学出版会、2002
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