NASAのジェット推進研究所に所属する海洋学者による研究が、津波の原因についての定説に疑問を投げかけています。
定説では、地震による海底の垂直方向の動き(隆起あるいは沈降)が津波の原因であるとされています。この定説には、1980年代に日本の科学者がおこなった波浪水槽を使った実験が大きく寄与しています。その実験の結果、海底の水平方向の変位が津波に与えるエネルギーは無視してよい量だという結論が導き出されたのです。
ところが、NASAの研究者によると、地震計やGPSのデータを使って2004年に発生したインド洋大津波を検証すると、定説では十分に説明できないことが判明。海底の水平方向の変位を計算に入れると、現実の観測データに非常によく合致することがわかったということです。
海底の水平方向の動きが作り出す運動エネルギーは、水深と海底の動くスピードに比例します。ところが、NASAの研究者が波浪水槽を使った日本の実験を検証したところ、次のような欠陥が明らかになりました ―― 水深と海底の水平変位の実際の比率を再現するには水槽が浅すぎたこと、地震の際のプレートの動きを再現するために使った水槽内の壁の動きが遅すぎたこと。
これらの欠陥を取り除いた新たな実験の結果、2004年のインド洋大津波と2011年の東北地方太平洋沖地震にともなう津波において、海底の水平方向の変位が津波の持つエネルギーの半分以上に寄与したことが明らかになったとのことです。
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気象庁などが発表している津波の波高の予測なども、見直しが必要になるかも知れません。