海洋研究開発機構(JAMSTEC)の発表によると、南シナ海や日本海などの縁海(背弧海盆)がどのようにして形成されたのかを探る研究航海が2月7日から始まっています。南シナ海の真ん中で海底を掘削することになっており、昨年12月に起きた中国軍によるアメリカ海軍の海洋調査用無人潜水機強奪事件のような妨害がまたあるのではと思ったのですが、研究チームに中国の研究者も加わっているので大丈夫そうです:
- 国際深海科学掘削計画(IODP)第367, 368次研究航海の開始について (写真、地図あり)
- 日本列島が大陸から分裂、なぜ?海底掘削調査へ (説明図、地図あり)
上掲の発表文や記事によると、縁海(背弧海盆)の形成メカニズムについては(1)地球深部からの高温マントルの上昇、(2)大陸地殻の薄化、という2つのモデルがあるようです。
背弧海盆について『プレート収束帯のテクトニクス学』(木村学著、東京大学出版会、2002)には次のような記述があります:
この背弧海盆は海洋性の地殻をもち、かつ多くのものが海嶺の両側で見られるのと同じように地磁気の縞模様をもつので、島弧が大陸から離れて開いた海であることは疑いがない。
(中略)
1970ー80年代を通じて、プレートテクトニクスに基づいてなぜ背弧海盆が開くのかを説明するさまざまなモデルが提案された。しかし、背弧海盆が西太平洋と南太平洋地域に偏在していること、時間的に定常的に形成されているのではなく、集中的に形成される時代があるらしいことなどを含めて、すべてを説明する適切なモデルはいまだない。背弧海盆形成の問題は個体地球の表層のプレートテクトニクスだけを見ていては解決しそうにない。
『プレート収束帯のテクトニクス学』では、提案されているさまざまなモデルは大きく積極的拡大モデルと消極的拡大モデルに二分されるとしています。前者は上記(1)、後者は(2)に相当するものと考えられます。
(2)の「大陸地殻の薄化」はわかりにくいと思いますが、大陸の縁に沈み込むプレート(スラブ)が海側へ徐々に後退していく(海溝が大陸から遠ざかる)ことなどによって大陸の地殻が引き延ばされ薄くなることを指しています。
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