NASAが来月打ち上げる予定の小惑星探査機オシリス・レックス(OSIRIS-REx)。第1の使命は、小惑星ベヌウ(101955 Bennu注)で試料を採取し地球に持ち帰ること。さらに、ベヌウの軌道を変化させる可能性があるヤルコフスキー効果を観測すること。
小惑星ベヌウは2135年に地球に大接近。NASAの専門家によれば、その際に、地球や月の引力によって軌道が変化し、2175年から2196年の間に地球に衝突する可能性があるとのこと。ベヌウの直径は約500mで、衝突すれば大都市を消滅させるほどの破壊力があるとされています:
- NASA warns asteroid could hit planet Earth
- Asteroid Strike Could Cause 'Immense Suffering'
- No, Asteroid Bennu Won't Destroy Earth
2135年のベヌウの地球接近について、最新の予報は以下のようになっています(1LD=地球から月までの平均距離):
- 接近日時(日本時間): 2135年9月25日21時20分(±1時間38分)
- 接近距離(最小): 0.45LD (17万1000km)
- 接近距離(最大): 1.88LD (72万2000km)
- 地球との相対速度: 秒速6.08km (時速2万2000km)
まだ接近日時にも接近距離にも大きな不確実さが残っています。2135年の予測でこの程度ですから、その先の2175年から2196年についてはもっと不確実さが広がってしまいます。はたして衝突はあるのでしょうか。
冒頭で述べたヤルコフスキー効果は、小惑星の軌道を長期にわたって予測するときに大きな影響を及ぼす要素であると同時に、地球に向かってくる小惑星の軌道を逸らす手段としても使える可能性を秘めています。オシリス・レックスがもたらす観測データは、将来の世代がベヌウや他の小惑星がもたらす災害を回避するための基礎的な情報となることでしょう。
注: 日本語ではベンヌとも表記します。アメリカ人の発音は〝ベニュー〟に聞こえます。もともとは古代エジプトの神の名です。この神は死と再生のシンボルとされ、不死の霊鳥としてセキレイやアオサギの姿で描かれました。ギリシアに伝わって不死鳥フェニックスになったそうです。
関連記事