NASAが12月12日に発表したところによると、ハッブル宇宙望遠鏡による観測で、木星の衛星エウロパの南極付近から水蒸気が噴出しているのが確認されたとのことです:
水蒸気の噴出は、エウロパが木星から離れている時期に起こり、木星に近づいたときには起きていないことから、エウロパの表面を覆う氷の地殻に縦横に走る亀裂が、木星の重力によって開いたり閉じたりしていると考えられています。
エウロパの氷でできた地殻の下には、液体の水をたたえた海洋が存在すると考えられていますが、水蒸気の噴出が確認されたことで、その信憑性が高まりました。
土星の衛星エンケラドスでは、水蒸気と塵が噴出していることが、探査機カッシーニによって確認されています。
エウロパの地下の海洋には生物が存在している可能性があると考えられています。エウロパに着陸して表面の氷を掘削し、地下の海洋を調査する探査機の構想がありますが、まだアイデアの段階です。今回の発見で、エウロパに着陸して氷を掘削するような複雑なプロジェクトではなく、エウロパの上空に漂う水蒸気を捕集して調べるもっと「単純」な探査機によって、地下の海洋の成分、特に生物の存在につながる有機物の確認ができる可能性が出てきました。
アーサー・C・クラーク原作の「2010年宇宙の旅」では、エウロパに生物が存在するという設定になっています。そして、遺棄された宇宙船ディスカバリー号内に取り残された人工知能 HAL9000 は次のようなメッセージを人類に向けて発信し続けます ―― 「これらの世界は全てあなた方のものだ。ただし、エウロパは除く。決して着陸してはならない。」(エウロパの生命の進化に人類は介入してはならない。)
関連記事
- 木星の衛星エウロパに魚が生息? (09年11月18日)
- エレーニン彗星と妖星ゴラス (11年10月17日)