「地震専門家らに有罪判決 ― イタリア・ラクイラ地震 (その1)」からの続きです。
『New Scientist』誌が、ラクイラ地震前の科学者や防災当局者の発言、ラドン・ガスによって予知したとする研究者の動きなどを手短にまとめた記事を掲載しています:
以下は、上記記事の主要部分をテキトー訳したものです。英国エジンバラにある英国地質調査所の地震学者Roger Musson博士の説明に基づいた記事です:
ラクイラ地震の本震に至る過程で、2つの事が起こりました。その第1は、小規模な地震が連続して発生したことです。そのような地震は、大きな地震の前に発生する前震である可能性があるので懸念を呼び起こしました。
問題は、そのような小さな地震の群発は大きな地震に結びつくことなく収まってしまうことがしばしばあり、また、大きな地震の前に必ず前震があるとは限らないことです。ラクイラの場合、同地域で発生する大きな地震は前震を伴わない傾向があります。したがって、大きな地震が発生する可能性は明らかにありましたが、実際に大きな地震が発生すると考えるに足る特段の理由はありませんでした。
(第2に) 状況をさらにわかりにくくしたのは、イタリアのアブルッツィにあるグラン・サッソ国立研究所の研究者であるジャンパオロ・ジュリアーニによる予知でした。ジュリアーニは、拡声器をつけた車で街の中を回り、人々に避難を呼びかけました。さらに彼は、オンラインで警告を発しましたが、これは(当局によって)削除させられました ―― これらのこと全てが、感情の炎を燃え上がらせました。
実際に地震が起きた後、ジュリアーニは自分の正しさが証明されたと主張しました。しかし、これには同意しかねます。ジュリアーニは、(地震の前に)地下からしみ出すラドン・ガスを検出していました。ラドンの放出は、地震発生に至る過程で時たま見られる現象で、地震が迫っていることを示していることがあります。しかし、他の予知手法と同様にラドンは信頼性が低いのです ―― 地震以外の多くの現象によってもラドンガスが発生するというのが理由の一つです。
実際、ジュリアーニは地震発生の場所を誤っていました。彼は、地震で被害がなかった地域の住民に対して、被害があった地域への避難を勧めていたのです。もし、人々が彼の指示に従っていたら、犠牲者はもっと増えていたことでしょう。
それでは、6人の科学者はどういう理由で告発されたのでしょうか。彼らは、2009年3月31日(地震の1週間前)にイタリアの市民保護局によって催された市民集会で次のように発言したのです ―― 大地震発生の可能性を排除することはできないものの、大地震が切迫していると考えるに足る特段の理由はない、と。
集会の後、市民保護局の副局長であるベルナルド・デ・ベルナルディニスはメディアに対して、小さな地震によって地震の歪みが減少し、大地震の可能性が下がっていると発言しました。これが全くの間違いでした。
検察側は、この発言がラクイラの住民に対して(大地震は起きないという)誤った確信を持たせてしまった、としています。これは真実でしょう。しかし、なぜ他の6人の科学者までが責任を問われなければならないのでしょうか。そこが腑に落ちない点です。
(完)
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