アイスランドの火山噴火でヨーロッパを中心とした航空網が麻痺状態に陥り、各国の空港で足止めされた多数の旅行客が不安と不自由な生活を余儀なくされました。私自身も、程度の差はあるもののフランスの空港で似たような経験をしたことがあるので、事態の推移に注目していました。グループ旅行ならいざ知らず、たった一人で旅行しているときにこのような状況に置かれた場合の不安感は、非常に大きなものです。そんなときに自国の在外公館が親身な支援をしてくれれば、どんなに心強いことでしょう。
今回の航空網麻痺では、各国が足止めされた自国民に対してさまざまな支援をおこなったり、計画したりしました。報道を見る限り、もっとも大がかりな支援をおこなおうとしたのはイギリスでした。その他の国々も、物的・金銭的な支援を実施(あるいは計画)しています:
ひるがえって、日本はどうだったでしょうか。以下は、今回の事態に関して外務省がウェブ・サイトに掲載した 3件の情報です。私の知る限り、他には見あたりません:
早い話が、注意喚起と情報提供のみ。困ったことがあったら現地の日本国大使館・総領事館に相談せよ、情報提供をおこなっていますから …… との仰せ。そうは言われても、いつ出発便のアナウンスがあるかわからないので、あまり長い時間出発ゲート付近から離れているわけにもいかず、なれない国では大使館・総領事館に公衆電話をかけることすら困難を感じることがあるものです。
思い出されるのは、初めて海外出張をする前に受けたオリエンテーションで聞いた印象的なアドバイス ―― 海外でクーデターや暴動などに遭遇し、本当に身の危険を感じたときは、距離が同じであれば日本大使館ではなくアメリカ大使館に逃げ込んだ方がよい ―― です。特にアメリカ系の企業に勤めている場合は、日本人であっても社員証を見せれば追い出されることはなく、アメリカ市民に準じる保護が受けられる可能性が高いとの説明でした。一方、日本の在外公館は危機に対する備えが十分ではなく、職員の対応も官僚的で、自国民を保護するというよりも、なんとかお茶を濁して早めにお引き取りいただきたいというのが本音で頼りにならないとのことです。
今回の航空網麻痺で、日本の在外公館の職員が空港まで出向いて相談にのるといった支援はできなかったのでしょうか。全部の空港でおこなうのは無理だとしても、日本人滞留者の特に多い空港に限定するなどすれば可能だったのではないでしょうか。