調べてみると国連の組織は複雑怪奇、似たようなことをおこなう組織がいくつもあり、どこかの国と同じように官僚機構がどんどん自己増殖しているように思えます。それはさておき、この認証制度を仕切っているのは OCHA(国連人道問題調整事務所)の下に設けられた INSARAG(国際捜索救助諮問機関)です。
この INSARAG の設置された経緯について、「国際緊急援助における UNOCHA の援助調整と日本の取り組み」(沖田陽介、JICA四国支部業務チーム/元JICA国際緊急援助隊事務局オペレーションチーム; pdf形式)という文書から引用させていただきます:
1988年にアルメニアを襲った大地震、通称スピタク地震が国際緊急援助における援助調整が叫ばれる発端であった。この地震災害に対し、日本を含めた世界各国は救助チームを派遣した。同国に派遣された救助チームは相当の数に上り、すでに救助活動のニーズはなくなり、アルメニアが求めていないにもかかわらず、続々と各国からの救助チームが押しかけるという事態が発生した。その結果、災害援助活動の展開全体が滞ることとなり、この反省を受けて 1991年に国際捜索救助チームの援助活動調整を行う INSARAG(International Search and Rescue Advisory Group:国際捜索救助諮問機関)が、UNOCHA(当時UNDRO:Office of the United Nations Disaster Relief Coordinator)を事務局として発足した。そして、今回中国の救援隊が取得したという「重型救援隊」(Heavy Rescue Team)については、上記の文書に次のような記述があります:
INSARAGの目的は、国際 USAR(Urban Search and Rescue:都市域における捜索救助)チーム間の情報交換等の連携を図り、国際的に広く受け入れられる捜索救助の方法とシステムの開発を通じて救助活動の効率を高めることである。
組織体制としてはアフリカ・欧州グループ、アメリカグループ、アジア・太平洋グループの3つの地域グループに分かれ、各グループの代表とUNOCHAが参加する運営委員会、定期的地域会合、リーダー会合、必要に応じて地域ごとまたは地域横断的に開催されるワーキンググループなどが設置され、また訓練や研修も実施される。
軽中重分類とは米国が提案しているもので、各国チームをその人員、装備、能力等によって軽(Light)・中(Medium)・重(Heavy)に分類し、能力を十分に有しているチームとそうでない任意の団体とを区別し、受け入れ側の被災国の負担を可能な限り少なくするという動きである。各救助チームがさらに上のレベルを目指すことを促すのだという意見がある反面で、NGO などの小規模のチームが国際捜索救助活動の現場から排斥される恐れも併せ持つ動きでもあり、これまで日本も導入については慎重な発言をしてきた。引用した文書は、2006年発行の『国際協力研究』に載っているものです。その時点では、軽・中・重という分類は米国が「提案」している段階だったようです。その後、日本のチームがこのような資格認証を受けたという報道を私は見た記憶がないのですが、日本も何らかの認証を受けているのでしょうか。