立秋の時期は暑くて当然なのです。暑さが頂点に達し、一年のうちで一番暑い時期だからこそ、立秋という名前がつけられたのです。立秋という言葉は「秋気立つ」から来ています。この時期から秋の気配が少しずつ現れ始めるという意味です。つまり、これまでは暑さが日に日に増していたが、この立秋の時点から少しずつ秋の気が入り始め、これ以上は暑さが増さないよ、ということなのです。気温のグラフでいえば、これまでは右上がりだったものが、立秋の時点で水平になり、それ以降は右下がりになるというイメージです。温度のグラフがピークに達するのが立秋なのです。
以下に、『天体観測ハンドブック』(鈴木敬信、誠文堂新光社、1965)の「二十四節気の言葉の意味」から、一部を引用します:
立春は「春の気立つ」の意味です。(中略)
ところで冬は寒いものですが、その冬の寒さもいつかは頂上に達するときがありましょう。寒さが頂上になったのですから、翌日からは暖かさがじわりじわりとしのびこんできて、寒さがやわらぐことになります。この寒さの頂上の日が立春なのです。「陰の気きわまって陽の気きざす」陽の気つまり春の気がしのびこみ始める日、それが立春、というわけです。
よく「立春だというのにこの寒さ、春はまだまだだ」などという言葉を聞くことがありますが、これは立春の意味をとりちがえている人のいうことです。立春だから最高の寒さなのです。まちがえぬようご注意ください。
なお、立夏・立秋・立冬も同じような考えかたから生まれた言葉です。つまり立夏は春たけなわのころ、立秋は夏たけなわのころ、立冬は秋たけなわのころ、のことであって、まちがっても「立秋だのに、ちっとも涼しくない」などといわないようにしてください。
(中略)
夏至(げし)は、夏になったとの意味、小暑・大暑は文字通りで、すこし暑くなった、たいへん暑くなったとの意味で、この暑さは立秋になって頂上に達します。
8月も下旬になりますと暑さがやわらぎ、朝夕はしのぎやすくなります。処暑(しょしょ)はこれを意味します。処とはおちつくこと、暑さが処分された、と考えてよろしいでしょう。