昨夜の記事「トンガ沖で海底火山が噴火」の続報です。
噴火について
海底火山の位置について、情報が錯綜しています。ほとんどの報道では、トンガタプ島(トンガの首都ヌクアロファのある島)の南西海岸から約 10km の沖合としています。しかし、スミソニアン研究所と USGS(米国地質調査所)が共同で提供している下記の火山噴火情報では、首都ヌクアロファの北北西 62km の Hunga Tonga-Hunga Ha'apai が噴火していると記載しています。噴火が始まった日付や噴煙が高く立ちのぼった日付が報道と一致しています。しかし、まったく別の火山が期を同じくして噴火し始めたのかもしれません:
Hunga Tonga-Hunga Ha'apai の詳細情報や写真が以下にあります。この2つの島は安山岩質(ハワイなどは黒い玄武岩質)の岩石で構成され、海面下に隠れている大きなカルデラの西壁と北壁が海面上に出たものであるとのことです:
"Hunga"という言葉が何語なのかはわかりませんが、日本語の「噴火」と似ていて面白いと思います。
ご存知『ボストン・グローブ』紙の「ザ・ビッグ・ピクチャー」が今回の噴火の写真を特集しています。既存の火山島と海底の少なくとも 2か所から噴火しています。火山島の山体の勾配を考えると、海中で噴火しているのは新たに火道をつくって上昇してきたマグマというよりは、既存の火山島の火道から分岐した板状マグマが海中に噴き出したもののように思えます:
各写真の左下には番号が付けられています(1枚目を除く)。12番の写真がいかにも南洋の島らしい風景で気に入っています。立ちのぼる噴煙の右半分に日光が当たっています。首都ヌクアロファの海岸から撮影したとあるので、撮影時刻が朝であれば噴火場所はトンガの北北西、夕方であれば南西ということになります。写真の色調からは朝に撮影されたような印象ですが、確定できません。
Hunga Tonga-Hunga Ha'apai の位置については下記のグーグル・マップを参照してください:
地震について
日本時間の今日午前3時17分、トンガの首都ヌクアロファの南南東 220km、深さ 34km でマグニチュード 7.9 の大地震が発生しました(下記 USGS の発表参照)。太平洋津波警報センター(PTWC)では Mt 7.7、深さ 10km と発表しており、気象庁の遠地地震情報も PTWC に追随しています。深さが大きく食い違っているのが気になります:
下記、USGS の資料によれば、今回の地震は逆断層型だったようです:
震央の位置については下記のグーグル・マップを参照してください:
震央はトンガ・ケルマディック海溝の海溝軸に極めて近い位置にあります。太平洋プレートがオーストラリア・プレートの下に沈み込み始めてすぐの場所で発生したようです。このような場所では、震源の深さが 34km なのか、10km なのかで、地震がどのような仕組みで発生したのかの推定が大きく影響を受ける可能性があります。
津波について
マグニチュード 8 に近く、震源も浅い大地震であったにもかかわらず大きな津波は発生しませんでした。太平洋津波警報センター(PTWC)は、地震発生 12分後に北米太平洋岸を除く太平洋全域に津波警報を出しましたが、2時間弱で警報を解除しています。私が見た報道の範囲では、津波の最大値は 4cm でした。トンガ周辺の地震と津波の関係については、このブログの以前の記事「トンガの地震は津波を起こしにくい」を参照してください。
噴火と地震の関係について
トンガ沖の火山噴火と今回の大地震は関係があるのかについて、当然といえば当然ですが、今のところ専門家の見解はあまり出てきていません。唯一、オーストラリアの放送局のサイトが、「無関係」という専門家の発言を短く伝えています:
噴火場所と震央との距離は、噴火場所がトンガの北北西であった場合は約 300km、南西であった場合は約 200km で、かなり離れていることに留意する必要があると思います。
Image Credit: U.S. Central Intelligence Agency