ついに月と地震の関係が明らかになった、とイギリスの科学誌『ニュー・サイエンティスト』が伝えています。
月と地震の関係については、これまで 1世紀以上にわたって専門家の間で論争があり、様々な研究論文が発表されてきました。アマチュアが思いつきで月と地震の関係についてあれこれ言うのは簡単ですが、専門家が科学的な事実としてそのことを示すには大変な作業が必要となります。今回の研究では、従来の研究で対象とされた地震の約10倍の数(約44万件)の地震を分析したとのことです。そして、得られた結果は、アマチュア地震研究者が期待するようなものではありませんでした。『ニュー・サイエンティスト』の記事から結論の部分を英文のまま引用します:
They found that about 1 per cent of earthquakes do coincide with Earth tides.
以下は、『ニュー・サイエンティスト』の記事です:
もう少し詳しい記述(といっても論文のアブストラクトです)が以下にあります:
上記をまとめると次のようになります:
- 地球潮汐(earth tides)が地震を引き起こすことを示す明確な証拠は、過去1世紀以上にわたって曖昧なままであった。地震について地球全域をカバーする最大のカタログ(NEIC カタログ、44万2412件の地震を記載)を使って分析した結果、固体地球潮汐の位相と地震発生のタイミングに明らかな相関(信頼度 ~99%)を見いだした。
- 地球潮汐によって大地が持ち上げられるとき(つまりリソスフィア内に通常かかっている応力が軽減されるとき)に、地震の発生頻度はごくわずかだが上昇する。
- この地球潮汐の位相にともなう地震発生頻度の分布異常は、小規模かつ震源の浅い地震でより大きい。
- 逆断層が卓越する地域よりは、正断層や横ずれ断層が支配的な地域の地震の方が潮汐の影響を受けやすいと考えられるが、地球潮汐による地震発生が地震発生機構に依存するという統計的に有意な証拠見つからなかった。
- 海洋や大気の潮汐による負荷よりも、地球の固体部分におこる潮汐によって地震が引き起こされている可能性が非常に高い。海洋の潮汐による負荷が副次的に作用している可能性はあるが、使用した地震データベースが十分に完全でも均一でもない(海域で発生する地震についてさらに小規模の地震まで収録することが必要)ため、そのことを見いだすことはできなかった。
- 潮汐による変位が最大になったとき、とくに小規模で震源の浅い地震で、発生確率がわずかに(おおよそ 0.5% から 1.0%)上昇する。
つまり、大地震には潮汐の影響は見いだされなかった、浅い小規模の地震でごくわずかに潮汐の影響が認められた、ということです。
折りしも、今月8日(日)午前5時8分に月が地球に最接近します。そして、翌9日(月)は満月で大潮。さらにこのとき、太陽―地球―月が直線上に並び、半影月食が全国で見られます。太陽や月が地球に及ぼす潮汐力がふだんよりも大きくなることは言うまでもありません。
Image Credit: NASA