今週は、サンフランシスコでAGU(米国地球物理学連合)の秋季大会が開催され、様々な研究発表がおこなわれています。そのため、地球科学分野の新しい知見が次々にニュースサイトをにぎわせています。その中の一つ、ジョーンズ・ホプキンス大学のブルース・マーシュ(Bruce D. Marsh)教授の発表を紹介します:
- Drillers break into magma chamber (イギリス BBC;地図と動画あり)
- Magma Discovered in Situ for First Time (ジョーンズ・ホプキンス大学のニュース・リリース; マーシュ教授の写真あり)
- ハワイ島(ハワイ諸島最大の島、ホノルルのあるオアフ島とは別)東部のキラウェア山麓で、民間企業が地熱エネルギー源を探すための試掘ボーリングをおこなっていた。その試掘孔が、深さ2.5kmという浅い場所で、火山のマグマ溜まりに到達してしまった。マグマ溜まりから逆流したマグマは、5から10メートル上昇したところでボーリング・ドリルの冷却液に触れて固化した。
- マグマの専門家マーシュ教授が呼ばれ、調査にあたった。同教授によれば、これまでマグマ溜まりのマグマを直接観察した例はない。これまでの観察は、マグマが地表に流れ出て、溶岩と呼ばれるマグマの最終形態になってからおこなわれていた。溶岩では、マグマに含まれるガスはほとんど大気中に散逸してしまっている。溶岩とマグマでは、博物館で恐竜の骨を観察するのと、野外でうなり声を上げている生きた恐竜を観察するほどの違いがある。
- ハワイ島で見られる溶岩はほとんどすべて黒く流動性の高い玄武岩質で、海洋底地殻を形成する岩石と同じものである。一方、今回マグマ溜まりで直接観察されたマグマは、二酸化ケイ素分が多く粘り気の強い石英安山岩質であった。石英安山岩質マグマの化学的性質は、大陸を形作る花こう岩と類似している。今回、マグマ溜まりに到達したボーリング孔は、海洋性の玄武岩から、大陸を形作る岩石が分化する現場を観察させてくれる。