2008年12月22日月曜日

プレートの運動は40億年以上前に始まっていた

原始太陽系で、太陽の周囲をまわる塵の雲から地球が形成されたのは約45億年前とされています。この45億年の歴史のどの時点で、プレートの運動が始まったのでしょうか。まだ、はっきりしたことは分からず、諸説があるようです。現在、地球上で発見されている最古の堆積岩は38億年前のものです。この岩が堆積した38億年前には海と陸が存在し、現在と同じように陸地が侵食され海底で地層が堆積する現象が起きていたと考えらます。このことから、遅くともこの38億年前の時点までには、プレートテクトニクスが働き始めていたと考えることが可能です。

カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の研究チームは、40億年以上前に、プレートテクトニクスにともなう海洋底の沈み込みがおこっていた証拠を見つけた、と報告しています。以下は、UCLAのプレス・リリースです:
上記の内容をまとめると次のようになります:
  • プレートテクトニクスは、これまで科学者が考えてきたよりはるかに早く、40億年以上前に始まっていた。UCLAの研究チームの論文が、科学誌『Nature』の11月27日号に掲載される。
  • 地球史の最初の5億年間に、プレートテクトニクスがすでに始まっていたという証拠が、西オーストラリアで採取された溶岩やマグマの中に含まれるジルコンの粒を精密に分析することによって得られた。
  • 初期の地球は、乾燥し荒涼として大陸の存在しない環境だった、あるいは、赤く融けた溶岩で覆われた地獄のような場所だったというイメージは間違いだった。地球は誕生したのち比較的短期間で、現在も続いている力学的な状態になった。大陸、水、青い空、青い海などは、これまでわれわれが考えてきたよりはるかに早くから存在していた。
  • 地球の年齢は45億歳。一部の科学者は、プレートテクトニクスは35億年前に始まったと考えてきた。他の科学者はもっと後の時代になって始まったと考えていた。
  • 研究チームは、西オーストラリアで採取された約30億年前の溶岩やマグマの中に含まれるジルコンの粒を分析した。ジルコンは重く耐久力のある鉱物で、ダイヤモンドの代用品やアクセサリーとして使われる合成キュービック・ジルコニウムと類似の鉱物。資料とされたジルコンの粒は、髪の毛の太さの2倍ほどの大きさ。
  • 高解像度のイオン・マイクロプローブをつかって、ジルコンの粒の年代と組成を高精度で測定。その結果、ジルコンは40~42億年前のもので、当時の地球全体の平均と比べて非常に低い地殻熱流量の場所で形成されたことが判明。
  • 地球の初期5億年の平均的熱流量は1平方メートルあたり200~300ミリワット。一方、試料のジルコンは1平方メートルあたりわずか75ミリワットの熱流量の場所で形成されていた。75ミリワットの熱流量はプレートの沈み込み帯の数値。
  • 間接的ではあるが、強力な証拠である。プレートテクトニクスなしに、75ミリワットという低い熱流量の場所でマグマが形成されるシナリオをいくつも検討。その結果、それらのシナリオでは、ジルコンの化学組成や花こう岩の低い溶融温度を説明することができなかった。
  • 地球最初の5億年に水が存在していた証拠は多数見つかっている。プレートテクトニクスは水のない惑星では成立しない。43億年前の地球表面、またはその近くに液体の水が存在していたことを示す強力な証拠は、同じ研究チームが見つけ、2001年1月11日号の科学誌『Nature』のカバー・ストーリーとなっている。
  • 別々の方向からの5つの独立した証拠が、かつては急進的すぎると思われた仮説を支持している ―― 調査したジルコンの含有成分は、ジルコンが水を十分に含んだマグマの中で成長したことを示している。さらにその環境は、驚くほど低い地熱増温率(地球内部で深さに応じて温度が上昇する率)だった。これらのジルコンが形成された環境条件すべてと矛盾しないメカニズムは、プレートの境界だけである。ジルコンの含有成分の化学的性質は、ジルコンが今日プレート境界で見られる2種類のマグマが存在する場所で形成されたことを示している。
「条件に合うのはプレート境界しか残らない」という消去法で結論を出している点について、まったく想定外のシナリオがありえるのでは、と一抹の不安を覚えます。しかし、興味深い研究結果だと思います。初期の地球は、たくさんの隕石が降り注ぐマグマ・オーシャンだったというイメージがすり込まれてしまっていますが、その期間はかなり短かったのかも知れません。

写真はジルコンの結晶 Image: Copyright Dr. Richard Busch; Image source: Earth Science World Image Bank